財政破綻、人口減少だけではない 破綻国家となりつつあるウクライナの窮状

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民主主義に疑問を呈さざるを得ない事態も

 ウクライナはさらに深刻な問題を抱えていることも明らかになっている。

 国連薬物犯罪事務所(UNODC)は6月27日「ロシアによるウクライナ侵攻により違法薬物の製造が拡大する恐れがある」と警告を発した。

 UNODCによれば、ウクライナで摘発・廃止されたアンフェタミン(合成麻薬)の製造拠点は2019年の17カ所から20年には79カ所に増加したという。79という摘発件数が世界最多だった。戦争状態が続けば摘発する警察もいなくなり、ウクライナの合成麻薬の製造能力がさらに拡大することは間違いないだろう。

 ウクライナの民主主義に疑問を呈さざるを得ない事態も生じている。

 ウクライナ政府は6月20日、同国の最大野党「生活のためのプラットフォーム党(OPFL)」の政治活動を公式に禁止し、OPFLの財産を没収した。ロシアとの良好な関係を模索してきたOPFLの2019年議会選挙の得票率は13%であり、昨年の世論調査ではゼレンスキー大統領が率いる「国民の僕」を上回る人気を誇っていた。

 戦時中とはいえ、「少数派の尊重」という民主主義の原則を踏みにじる決定を行うのはいかがなものか。

 ウクライナは旧ソ連が侵攻したアフガニスタンのように「破綻国家」への道をひた走っているように思えてならない。一刻も早い停戦が望まれる。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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