「KDDI」通信障害は人災か? 「15分間の間隙」が生みだした重大事故と「400億円」個人補償の行方

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 7月2日未明に起きた通信大手KDDI(au)の大規模通信障害は4日夕になってようやく音声通話とデータ通信が「ほぼ回復」した。しかし全面復旧のメドは5日夕にまでズレ込む見通しだ。「過去最大級の通信事故」(総務省関係者)に発展した今回の大混乱はなぜ起きたか。また、今後の焦点に浮上している「補償」問題はどうなるのか。

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 KDDIによれば、3日の午後5時半頃までに西日本・東日本エリアでの復旧作業は完了したとされるが、通常通信に戻すためのテストを行っていたため、4日午後になっても通信量は制限され、電話が繋がりにくい状態が続いた。

「通信障害の影響は最大で3915万回線にのぼり、通話ができない、ショートメッセージサービス(SMS)も送れないなどの事態が続出しました。さらにKDDIの通信回線を使っている気象庁の観測システム『アメダス』のデータ収集に混乱を及ぼしたほか、一部の地方銀行のATMが利用できなくなったり、ヤマト運輸の配送情報が更新されないなど、影響は多岐にわたりました」(全国紙社会部記者)

 金子恭介・総務相は3日に開いた臨時会見で、今回の障害が電気通信事業法上の重大な事故に「該当する」との認識を表明。KDDIに対して行政指導する方向で検討に入った。

 なぜ、前代未聞の重大事故は起きたのか。

15分の空白時間

 始まりは2日の午前1時35分、KDDIがメンテナンスの一環としてルーター(通信中継機)を旧タイプから新しいものへと交換する作業中に“エラー(異常)”を知らせるアラームが鳴ったことだった。

 ITジャーナリストの三上洋氏が話す。

「そのため、約15分後に元の旧ルーターに戻したのですが、音声通話を担うVoLTE交換機で『輻輳(ふくそう)』と呼ばれる、通信がパンクする現象が起きた。続けて、加入者データベースでも輻輳が発生し、さらに交換機とデータベース間でデータの不一致が大量発生するという連鎖現象が起きたのです」

 旧ルーターに戻すわずか「15分」の間に、多数の携帯端末から発せられた「再接続要求」が膨大に蓄積したことが輻輳を招いたと見られているという。

 携帯キャリアでは2018年にソフトバンクが、21年にNTTドコモが大規模な通信障害を引き起こしており、総務省が再発防止を求める行政指導を行った。

「2社の教訓を踏まえ、KDDIもコストをかけて障害対策の強化に取り組んでいたにもかかわらず、過去最大規模の通信障害を起こしてしまった。実は今回の事故を招いた技術的な根本原因はいまも不明のままです」(三上氏)

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