上京した若者が「東京の魚はおいしくない」と嘆く理由 ベテランバイヤーが語る“スーパーの事情”

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 東京では寿司店や鮮魚専門店、スーパーをはじめ、多くの店で国産・輸入、天然・養殖を問わず、多種多様な魚介類が提供されている。それぞれ好みはあるにせよ、値が張る「上モノ」から大衆魚まで味わえるのは間違いない。だが、時折、地方から上京した若者から「東京で買う魚はおいしくない」という言葉を耳にする。きっと「上モノを食べていないからだろう」とか、「海の幸に恵まれた地方では、獲ればかりの魚が格安で手に入るからかな」と、軽く聞き流してきたのだが、よく考えると大きな矛盾があることに気付いた。【川本大吾/時事通信社水産部長】

東京は魚の宝庫

 多くのヒト・モノが集まる東京だが、伊豆諸島を除くと魚がたくさん水揚げされる漁港はない。ただ、豊洲市場(江東区)という日本一のマンモス魚市場が存在し、新型コロナウイルスが猛威を振るう中でも休場せず、営業を継続してきた。同市場の水産物の取扱量は2021年が約33万トン。日本で獲れる天然魚の漁獲量の1割以上に当たり、鮮魚だけでも500種類以上が入荷する。

 このうち国産天然モノであれば、青森・大間産の本マグロや、北海道産のバフンウニ、福井県産の越前ガニといった高級魚介を筆頭に、各地からアジやイワシ、サバといった青魚を含め、ピンからキリまで揃っている。

 豊洲のほか築地場外市場などでは、ス-パーでは見かけない高級水産物が店頭に並ぶ。築地や銀座などの有名な寿司店や料理店が仕入れるだけあって、各種「極上モノ」が並び、魚のプロ同士が何やら悩まし気に商談する場面を見かける。

 こうして仕入れた魚を提供する高級店に足を運び、奮発して食べる寿司などが「おいしくない」はずがない。さらに、高級鮮魚を扱う百貨店で買った魚も、きっとおいしいに違いない。

 そこでハッと気付かされた。冒頭で触れた若者の愚痴は、大枚をはたいて食べたり買ったりする非日常の高級魚ではなく、「安くておいしい」が求められる日常の食事としての魚を指していたのだ。

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