ブラジル人に成りすました「ロシアスパイ」を摘発した意外な国の情報機関 CIAも凌駕する知られざる実力とは

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CIAも依頼

 オランダは、17世紀から18世紀にかけて植民地を拡大した。その当時から情報収集能力に秀でていたという。

「2000年代半ば、私はアフリカのある国に外交官として赴任したことがあります。当時、現地の原子力発電所に強盗が入ってパソコンが盗まれました。その原発の施設には核兵器製造技術のデータもあったので大騒ぎになりました。これは大変だと私もCIAと一緒に現場に駆けつけたのですが、そこにオランダの諜報員も来ていたのでびっくりしました」

 2010年、イランの核燃料施設がサイバー攻撃を受けたことが明らかになったが、ここでもAIVDが活躍したという。

「2012年、このサイバー攻撃はアメリカとイスラエルの情報機関が行ったとニューヨーク・タイムズが報じました。もっともイランのコンピュータシステムにどうやってマルウェア(コンピュータウイルス)を感染させたのかという謎は残りました。その後、このサイバー攻撃にはAIVDのスパイが関わっていたことが判明したのです」

 CIAとイスラエルの諜報特務庁が、サイバー攻撃をAIVDに依頼したのだ。

「AIVDは、イラン人のエンジニアを協力者にし、マルウェアをイランのコンピュータシステムに感染させるための内部アクセス情報を盗ませたのです。CIAがスパイ工作を依頼するくらいですから、いかに彼らが優秀であるかわかると思います」

 なお、AIVDによって入国を拒否されたGRUのチェルカソフはブラジル警察に拘留された。今後は虚偽文書使用の容疑で刑事訴追される可能性が高いという。

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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