中国で「特殊詐欺の架け子バイト」で逮捕された元日本人受刑者 地獄の刑務所生活を耐え抜き”奇跡の帰国”を果たすまで

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 特殊詐欺で一儲けしないか――。そんな甘い言葉に誘われ中国・福建省に渡り、現地当局に逮捕されたAさん(30代)。逮捕後に待っていたのは、殴る蹴るの壮絶な取り調べだった。3カ月後にようやく拘置所に面会にやってきた日本領事館の職員が口にした言葉は……。(前編「中国で『特殊詐欺の架け子バイト』をして4年半投獄された元囚人の告白『取り調べ室で吊るされて自白を強要された』」のつづき)

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「ノー、ノー、ゴーホーム」

 日本領事館の職員はAさんにリアルな現実を伝えてきたという。

「過去の例でいうと、このまま勾留が1年以上続き、起訴されて裁判で有罪になってしまう。出るまでに5、6年はかかる可能性があります」

 Aさんは特殊詐欺グループに誘われて中国に渡り、何十件か日本に電話をかけた。だが、1日しか勤務していないうちに警察が踏み込んできたので、実際に詐欺被害を生んだ可能性はないと考えていた。取り調べでも、誰に対して詐欺を働いたなどの証拠が提示されることはなかったという。

 そのため、やがて強制送還されると思っていたのだが、領事館の職員が淡々と語った内容は厳しい現実であった。

「領事館の人は数カ月後にも訪ねてきましたが、なんとかしてくれるような雰囲気もなく、事務的なやり取りでした」

 平行して、同房の囚人たちからも厳しい現実を聞かされたという。

「僕らが捕まったことは拘置所内でも有名でした。中国の犯罪者として先輩である彼らは、『ノー、ノー、ゴーホーム』って笑うのです。帰れるわけないよ、諦めなって。実際、こんな国に闇バイトをしにきた自分が悪かったわけですし、やがて諦めの境地に至りました」

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