「ちむどんどん」のキーパーソン・原田美枝子 15歳でデビュー、20代で勝新に鼻をへし折られた女優人生48年を辿る

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出産・育児と仕事を自然体で両立

 出産・育児と仕事は自然体で両立した。1994年には大河さんの幼稚園のお弁当をつくり、優河と静河の面倒を見た後、故・和田誠監督の不条理ホラー映画「怖がる人々」の撮影に向かった。当時、子育ての苦労をマスコミに漏らしたことは1度もない。

 39歳だった1998年には主演映画「愛を乞うひと」で再び映画賞を総なめにする。毎日映画コンクール主演女優賞など8賞を得た。独占状態と言って良かった。

「子供が出来て、いろいろ見えるようになったんです」(原田、日刊スポーツ、2020年3月22日付)

 1人で映画の原案・脚本・プロデュース・主演をやったこともある。1980年の「ミスター・ミセス・ミス・ロンリー」(神代辰巳監督)である。2020年には映画「女優 原田ヒサ子」で監督にも初挑戦した。

「ちむどんどん」でも光る演技力

「ちむどんどん」は「水色の時」(1975年度前期)以来、実に47年ぶりの朝ドラで、意外に思った人が多いようだが、やりたいことが、たくさんありすぎたからだろう。

 この朝ドラの放送前には「見てくださった方が気持ちよく1日を始められるようなドラマになるといいと思います」ともコメントした。注目すべき言葉だ。

 原田が演じる房子は東京・銀座の一流レストラン「アッラ・フォンターナ」のオーナーで、ここに黒島結菜(25)が扮するヒロインの暢子が勤めている。2人は親戚でありながら、房子は暢子に対し、ことあるたびに「クビ!」と言い放つ。

 だが、房子に不快感を抱く人はいないはず。原田が内面の温かさを絶えず表現しているからだ。うまいから出来る。

 天才肌の少女が演技について考え抜き、巨匠たちにしごかれ、現在地に辿り着いた。

「ちむどんどん」は原田が登場すると画面が締まる。この朝ドラを、原田を中心にして観てみるのも一興だろう。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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