今さら「拘禁刑」創設のウラ 新聞・テレビは解説しない刑務所のヤバい実態

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根本は再犯者対策

「確かに刑法改正によって、高齢受刑者や薬物依存受刑者への対応が柔軟にできるとは思います。しかし、法務省が『最も有権者に納得してもらえる説明』を考え、それを大手メディアが報じたということではないでしょうか」

 では、河合教授が指摘する“残る半分の側面”とは何だろうか。教授は「改正が行われた根本理由として、受刑者の再犯防止を目指しているのは確かです」と言う。

「日本は経済的に豊かになり、犯罪を抑止する政策も世界でトップクラスの成功を収めました。犯罪に手を染める人が減っただけでなく、刑務所を出所して社会復帰を成し遂げた人も増えました。にもかかわらず、刑務所に入ってくる人がいる。この場合、いわば“選りすぐりの再犯者”であるケースが少なくないのです」

 まずデータから見てみよう。前出の担当記者が言う。

「平成19(2007)年版の『犯罪白書』に《全犯罪者の約30%にとどまる再犯者によって約60%もの犯罪が行われている》という記述があり、関係者の間で話題になりました。刑法犯の認知件数は平成14(2002)年の約285万件をピークに、一貫して減り続けました。令和2(2020)年の認知件数は約61万件と、5分の1以下に減少しています」(註3)

 初犯であれ、再犯であれ、「犯罪者の絶対数」は減っている。だが、「再犯者の割合」となると違う。

「5回以上入所」が2割

「例えば平成12(2000)年、検挙者における再犯者の割合は30%を少し超えるくらいでした。ところが、再犯者が占める割合は年々一貫して増え続け、令和2(2020)年では過去最高の49・1%に達したのです」(同・記者)

 この傾向は刑務所でも変わらず、「再び刑務所に戻る」受刑者の割合が増えている。

 ちなみに法務省が作成する『犯罪白書』では、初めて刑務所に入った者を「初入者」、再び戻った者を「再入者」という用語で表現している。

「平成12(2000)年から15(2003)年にかけて、男性の再入者割合が減少したこともありました。しかし、その後は右肩上がりです。令和2年では初入者が6038人に対し再入者は8812人で59・5%を占めました。女性は再入者の割合が低かったのですが、最近は上昇が鮮明です。令和2年では初入者942人に対し再入者は828人。割合は46・8%でした」(同・記者)

 男女の受刑囚を一緒にしても、令和2年における再入者の割合は58・0%だった。

 更に再入者の中で「5回以上入所」したことがある受刑者は何と23・1%に達し、再入者の中で最多を占めた。まさに“選りすぐりの再犯者”だ。

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