今さら「拘禁刑」創設のウラ 新聞・テレビは解説しない刑務所のヤバい実態

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 読売新聞オンラインは6月13日、「『拘禁刑』創設、改正刑法が成立…懲役と禁錮を一元化」の記事を配信した。担当記者が言う。

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「この日、参院本会議で『懲役』と『禁錮』の刑を一元化し、『拘禁刑』を創設するという改正刑法が可決、成立しました。日本で刑法が制定されたのは明治40(1907)年のことですが、刑の種類が変更されるのは初めてとのことです」

 大ニュースには違いないが、そもそも「懲役刑」と「禁錮刑」の違いが分からないという人が多数だろう。ならば、『広辞苑』(岩波書店)は、どのように定義しているだろうか。

「『広辞苑』で《懲役》を引くと《刑務所に拘置して所定の作業を行わせる刑》と出ます。一方の《禁錮》は《刑務所に拘置するだけで所定の作業には服させない刑》とあります。要するに“受刑者が作業に従事するか否かの違い”ということが分かります」(担当記者)

 日本は明治時代から、懲役の受刑者には労働を科していた。だが令和となり、受刑者の全員に労働を科さなくする──これがニュースの核心というわけだ。

 では、なぜ労働を科すのを止めたのか。今般の刑法改正について、ネット上で無料記事として配信しているのは、読売新聞の他にNHK(註1)と時事通信(註2)がある。3社が理由をどう説明しているか見てみよう。

3社の説明は綺麗ごと!?

◆読売新聞
▼受刑者の高齢化が進み、2020年は65歳以上の受刑者が2143人。これは00年の2・4倍にあたる。体力や認知機能が衰え、通常の作業が難しい受刑者もいる。
▼若年受刑者は作業時間に縛られている。再犯防止に必要な指導や教育を受ける時間が限られてしまう。

◆NHK
▼拘禁刑により受刑者の特性に合わせた処遇が可能になる。薬物依存の受刑者には再犯防止の教育プログラムを充実、高齢受刑者には体力や認知機能の回復を目指す取り組みを増やす、という具合だ。

◆時事通信
▼再犯防止の観点から、指導・教育に力を入れる狙いで、法務省は3年後の施行を目指している。

 河合幹雄・桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)は、法務省矯正局関連団体の評議員や刑事施設視察委員会委員長を歴任。全国の刑務所や少年院などの視察を重ねてきた。

『日本の殺人』(ちくま新書)、『終身刑の死角』(洋泉社新書y)、『もしも刑務所に入ったら』(ワニブックスPLUS新書)などの書籍を上梓。「日本一刑務所に入った男」として知られている。

 河合教授に今回の改正について訊くと、「全国紙やテレビ局の報道は、改正における半分の側面しか報じていない印象を持ちました」と言う。

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