JR上野駅に到着する電車はなぜ停車直前に大失速するのか 櫛型ホームの奥深き世界

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線路に設けた余裕分の距離

 実際に、このようなつくりをもつ駅の代表的な例としては、JR東日本の東京駅があげられる。ホームは、東北・山形・秋田・北海道・上越・北陸新幹線の列車が発着する20~23番だ。

 20~23番ホームの南端に立つと、さらに南に向けて約50mほど線路が延びている。普段は全く使わない余分な線路のおかげで、20~23番ホームに進入する列車は極端にスピードを落とさずに所定の位置に停止できるのだ。このように線路に設けた余裕分の距離を過走(かそう)余裕距離という。

 ところで、20~23番ホームのさらに南に延びた線路は、一見するとJR東海の東海道新幹線の線路へと向かっているようにも見える。実はそのとおりで、国鉄時代には東北新幹線などと東海道新幹線とが直通する計画が立てられていて、その名残なのだ。

 東京駅での新幹線直通計画は、国鉄の分割民営化後に途絶えてしまう。東北新幹線などはJR東日本、東海道新幹線はJR東海と会社が分かれ、またそれぞれの列車の本数が増えた結果、乗り入れが難しくなったからだ。東京駅という都心の一等地に国鉄が用意した直通用の線路の敷地は無駄になってしまったが、そのおかげで過走余裕距離を設けることができたからよしとしよう。

梅原淳(うめはら・じゅん)
1965(昭和40)年生まれ。三井銀行(現・三井住友銀行)、月刊「鉄道ファン」編集部などを経て、2000(平成12)年に鉄道ジャーナリストとしての活動を開始する。著書に『JR貨物の魅力を探る本』(河出書房新社)ほか多数。新聞、テレビ、ラジオなどで鉄道に関する解説、コメントも行い、NHKラジオ第1の「子ども科学電話相談室」では鉄道部門の回答者を務める。

デイリー新潮編集部

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