「食べログ」賠償命令判決で噴き出したモヤモヤ感 「評価点」はどこまで信用できるのか

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削除された口コミ

 食べログが紹介している飲食店は82万店を超え、利用した客が付ける評価や口コミを収集。それらを基に独自の計算手法であるアルゴリズムを用いて5点満点で評価を弾き出す仕組みになっている。このアルゴリズムが行う計算法について、カカクコム側は「営業秘密」に当たるとして、これまで非公開を貫いてきた。

「私は以前から“ブラックボックス”と化していた食べログの評価法に疑念を抱いていました。今回の判決で、食べログに抱いていたモヤモヤした思いが少し晴れた気がしました」

 こう話すのは、ITジャーナリストの井上トシユキ氏である。

「私にはグルメ散策が趣味の友人が複数いますが、彼らは10年近く前から訪れた店の感想を熱心に食べログに投稿していました。しかし数年前のある時、前評判とはかけ離れたサービスと食事の質だった飲食店に対し、奮起を促す気持ちを込めて少し手厳しい感想を投稿したことがあった。すると、すぐに食べログ側から連絡が来て“いたずらに店の評価を下げるようなコメントはやめて欲しい”と言われ、一方的に投稿を削除されたといいます」(井上氏)

 食べログに定期的に投稿していた井上氏の他の友人らも同時期、似たような経験を相次いでしており、それぞれが食べログ側に理由を訊ねたものの、一様に納得のいく説明はなかったという。

アルゴリズムに恣意性は?

「明らかに根拠のない誹謗中傷の類いを運営側がチェックして削除するなら分かりますが、友人らのケースはそうではありません。批評や辛口の感想と中傷の線引きが食べログ側の裁量に委ねられていると考えられる点が問題なのです。不透明な“自主規制”が行われれば、結果的に有料会員店などに都合のいいコメントが増える懸念は拭えません」(井上氏)

 食べログは口コミやランキングについて<本音を言える環境><中立公正><質の追求>の3つのポリシーを掲げている。

“本音の感想”を集めることがサイトの信頼性に繋がり、不満足だった内容の口コミも掲載することを謳っている。また、特定の店の口コミや点数を削除・変更することもないとする。それにより、「口コミの質」が担保されるためだという。

 しかし、井上氏はこうも指摘する。

「評価を計算する際の材料(サンプル)となるデータをアルゴリズムに提供するのは食べログ側です。基となるデータの取捨選択の権限は運営側にあるわけですから、ある程度、計算結果にも関与し得るシステムになっていると考えたほうが自然です。評価に食べログ側の恣意性がどこまで入っているのか――。外部からは見えない点が、食べログの信頼性にも影を落としているように思えます」

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