米国の投資額は1兆円 それに対し日本は? 国産ワクチン開発を阻んだ“2つのトラウマ”

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なぜ“国産”でないとだめなのか

荏原:ワクチンを国産化などせず、海外から買えば良い、という意見もあります。

石井:今回はたまたま、欧米で良いワクチンが作られ、売ってくれたので助かりましたが、将来、日本にそんなお金がなくなっている可能性もあります。しかし、まだ日本への世界の期待はあって、そこに未来を見出すべきではないか、と思います。また、安全保障の観点からも、次のパンデミックに備える国産ワクチンは必要なのではないでしょうか。

 まだまだチャンスもあります。中国のワクチンを作った専門家から「日本のワクチンはまだか」という連絡がきました。馬鹿にしているのかと訝ったのですが、何と「日本製ワクチンができているなら、自分の子どもに打たせようかと思った」と言うのです。日本の製品に対する安心安全というブランドイメージはまだまだあります。国産ワクチンを輸出すれば、世界への大きな貢献にもなります。

荏原:石井先生は「次のパンデミックに100日でワクチンを作るために」というプロジェクトタイトルで、クラウドファンディングを始められています。

石井:ワクチン開発には安定的に人材を育成することが不可欠なのですが、基礎研究をする若い研究者を雇用するための予算が限られています。これを何とかクラウドファンディングで支えてもらえないか、と東京大学のホームページに出しているのですが、なかなか一般の人の目には留まっていないのが実情です。是非、ホームページをご覧いただき、ご協力いただけると助かります。

構成:磯山友幸(いそやま・ともゆき)
1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。87年、日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリストとしての活動とともに、千葉商科大学教授も務める。著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』、『「理」と「情」の狭間――大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(以上、日経BP社)などがある。

デイリー新潮編集部

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