銃痕あり「ヤクザ幹部」が住んでいた家はお買い得か 全国初の「マル暴物件」競売に応募者ゼロの理由

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タイムリミットは今年10月

 都内の不動産業者によれば、暴力団事務所であれば、売買などの際に「心理的瑕疵物件」として告知義務に該当すると考えられているという。

「一方で住居の場合は、告知義務があるとの判例はないものの、あとで抗争などで契約者が損害を負った場合、不告知を理由に不動産会社が損害賠償請求訴訟を起こされるリスクがある」

 として、近年は仲介物件が元組員宅や近隣に組員宅があると判明しているケースでは、事前に告知する流れになっているという。

 尼崎市の取り組みが「重要な試金石」と見られているのは、現在の暴力団を取り巻く環境も影響している。

 暴対法の施行後、暴力団組員は新しく家を借りることができなければ、銀行口座もつくれないなど、締め付けが年々強まっている。

「まともな日常生活も送れないとなると、今後、組を抜ける人間はますます増えていくと見られ、同時に“元組員宅”の物件も増加します。その時、買い手が付かないままなら、暴力団関係者や周辺者が買い取る“元の木阿弥”に戻るか、廃墟になるしかない。どちらも近隣地域の治安には悪影響を与えます。“マル暴物件”に対する不安や懸案が杞憂に過ぎないのであれば、通常の経済活動のなかに組み込まれていくだけで、自治体の悩みの種になることもない。遠くない将来に訪れる事態の対処法を探る上でも、今回の取り組みの行く末は注目に値します」(前出・櫻井氏)

 尼崎市は今年10月末まで募集を続けるというが、それまでに買い手が現れなかった際は、その後の方針について「未定」という。

デイリー新潮編集部

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