「愛され高齢者」の共通点は? ヒントは女優・樹木希林さんの死に際

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 高齢者向けの指南書が、次々ベストセラーとなっている精神科医の和田秀樹氏。待望の新刊『老いの品格』(PHP新書)では、「快活な老後」を過ごすための新たな指針を示している。はたして健康で長生きできれば人生は幸せなのか。賢者の結論に耳を傾けてみよう。

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 35年余りの間、老年医学の精神科医という立場から6千人以上の高齢者を診てきた私は、いい年の取り方をする人と、そうでない人がいることを日々実感しています。

 いい年の取り方をしている人たちは、私なりに三つの共通点があることが分かってきました。それは「品よく」「賢く」「面白く」で、これらの資質を持つ高齢者の周りには、自然と人が集まり、幸せそうな老後を過ごしているのです。

 4年前に75歳でこの世を去った女優の樹木希林さんは、最期が近づいた時でも、数々の著名人らが馳せ参じ、枕元にたたずみ彼女と過ごす時間を惜しんだそうです。むろん大女優であろうとも、寝たきりになれば自らの地位を行使して無理矢理人を集めるなんてできません。死の間際まで人が集まるというのは、樹木さんの人徳、いわば「品格」あってのことだと思います。

過去の栄光が忘れられない高齢者

 私の勤めている病院には、大臣経験者の政治家や企業の社長といった社会的地位の高い方が入院することもあります。出世のため上司にこびて部下を蔑(ないがし)ろにした結果、退職後に入院しても誰一人としてお見舞いが来ない患者さんもいました。自分を可愛がってくれた上司は先に亡くなり、下の世代には見放されたわけです。

 それでも過去の栄光を忘れられないのでしょう。現役時代の地位やお金にこだわって、周りに威張り散らしてしまう「品のない」高齢者の方は一定数います。

 どうしても会社員時代は「肩書が立派な人がすごい」という価値観に縛られてしまいがちですが、年を取ってからはそのような物差しから解放されます。既成の肩書を求めるのではなく、「こうありたい」という自分なりの生き方を探求してみてはいかがでしょうか。

 これは偏見かもしれませんが、若いうちに成功してきた人ほど、過去の栄光にしがみつき、自慢話をする老人になりがちです。そんな成功体験などないという人はむしろラッキーで、人生のピークが後ろにくるほど、「今はダメでもこの先良いことがある」と前向きに考えることができます。

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