「愛され高齢者」の共通点は? ヒントは女優・樹木希林さんの死に際

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高学歴は「面白くない」?

 1970年代の「一億総中流」の時代を生きてきたその老人が、「格差の小さかった昭和の頃、日本人は一生懸命に働いた。マラソンで差がつき過ぎると追いかける気が失せるように、差はある程度は小さいほうが、みんな頑張って働くのでは」と指摘すれば、説得力や面白さを感じさせてくれます。

 知識に自分たちの経験を溶け込ますことで、多角的に物事を見て話ができるのも高齢者の強みです。「賢い老人」は、こうした工夫を日頃の会話の中に織り交ぜているものです。

 そうした姿を目指すなら、お孫さんが家にやってくる時に「何の話を聞かせようかな」と練っておくのもいいかもしれません。お孫さんたちも、老人のうんちくをダラダラ聞かされるより、自身の経験を交えて面白く話したほうが慕ってくれますし、「僕のおじいちゃんはこんなエピソードを持つ人だった」と亡くなってからも語り継いでいくでしょう。

 よく難関のテストを乗り越えてきた人、高学歴の人は既存の常識に縛られて「面白くない」といわれます。逆を言えば、常識に縛られない「面白い」発想ができるのであれば、学歴は全く関係がない。そのような老人になるためには、常に周りの人が考えていないことを探していく姿勢も大事だと思います。

共通する「愛され老人」

 これまでお話ししてきた「品のある老人」「賢い老人」「面白い老人」に共通して言えるのは、やはり周囲の人から「愛される」ということなのだと思います。

 このような「愛され老人」であれば、自己愛が満たされストレスも少ない状態になる。そうなると、必然的にストレスによる免疫機能の低下も避けられるわけですから、回り回って品格を持つことは健康にいいともいえるのだと思います。

 がんで亡くなる人の多い日本においては免疫機能の増強が重要であり、それをもたらす精神の安定こそが大切だと考えます。その意味でも「老いの品格」は、これからの人生にとって有益に働くのではないでしょうか。

和田秀樹(わだひでき)
精神科医(老年医学)。1960年大阪生まれ。東京大学医学部卒。和田秀樹こころと体のクリニック院長、国際医療福祉大学大学院特任教授。高齢者専門の精神科医として30年以上、高齢者医療の現場に携わっている。『「人生100年」老年格差 超高齢社会の生き抜き方』(詩想社)、50万部のベストセラー『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、著書多数。

週刊新潮 2022年6月9日号掲載

特集「老年医学の権威『和田英樹』が高齢者6千人を診た結論 『70代』『80代』が快活になるための『老いの品格』」より

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