「愛され高齢者」の共通点は? ヒントは女優・樹木希林さんの死に際

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「人間、死んでからだよ」

 大切なのは、高齢者になってもなお焦って何かを成し遂げねばと必死になるより、悠々と構えて自分のやりたいことをして、小さくとも将来に残る結果を出すことだと思います。

『「甘え」の構造』が大ベストセラーになった精神科医の土居健郎先生には、私が30代の後半にアメリカへの留学から帰ってから、週に2日ご自宅に伺って精神分析を受けていました。私の師匠であった土居先生は、よく「人間、死んでからだよ」と語っていました。

 生きているうちに地位や名誉を手に入れるより、死んでから自分自身がどう評価されるかのほうがよほど大切だという意味で言っておられましたが、本当にその通りだと思います。

 そもそも地位や名誉を手に入れようと躍起になると、どうしても周りのやっかみや反対を受けて人は離れていってしまいます。他方で、研究なり自分なりに見出したことに一生懸命だった人は、亡くなった後にも「あの人はこんなふうに打ち込んで……」と語り継がれ、その名が残る。それが悪名ではいけませんが、品格ある老い方をすれば、自ずと人々の記憶に残ります。

 2018年に山口県の周防大島町で行方不明になった2歳の男児を見つけ有名になったスーパーボランティアの尾畠春夫さんが一つの例なのかもしれません。彼は自分が「これだ」と思えるものを突き詰めた結果、全国にその名を轟かせました。何か打ち込めることを見出し、小さくとも成果を重ねる人のほうが多くの人には魅力的に映るものです。

高齢者同士の「老人差別」

 少し話が脱線しますが、ここ最近「老害」という言葉に象徴されるような若い人からの差別だけでなく、高齢者同士の「老人差別」を感じることがあります。

 たとえば、自らも老人なのに「ボケるなら死んだほうがマシだ」などと話す人がいますが、認知症になった方々からすれば、これほど失礼な言葉はありません。

 老いは避けられるものではなく、認知症だって遅かれ早かれ程度の差はあっても高齢者なら皆がなるのです。いわば自分の将来の姿を指して「こうはなりたくない」と言っているわけで、結局は高齢者差別を再生産することにつながります。

 他人をけなす態度をとるより、晩節を汚さず凛として「品よく生きよう」と背筋を伸ばして歩く高齢者のほうが、下の世代からしても「だてに年を取ってないな」と尊敬されます。こうした「品格ある老人」が増えるほど、お年寄りを尊敬する社会になっていく。そう私は考えています。

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