パワハラは認定されず「愛媛農業アイドル自殺訴訟」で原告の遺族が敗訴 「誹謗中傷に苦しんだ3年半」を事務所社長が告白

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12万円を用立てなかったから…

 それなら、なぜ母親は〈制服キャンセルでいいんやろ?〉という、そっけないメッセージを送ったのだろうか。裁判長もこの点について、このように突っ込んで聞いている。

裁判長 あなたはこのメッセージを送るときに、萌景さんはもしかしたらまだ全日制のB高校に行きたがってるかもしれないとは考えませんでしたか。

母親 考えたので、本当にこれキャンセルでいいんやろうっていう確認をしたら、もう。

 佐々木社長は、こう訴える。

「萌景さんが亡くなったのは、楽しみにしていた全日制高校に母親の反対で行けなくなり、絶望したことが引き金になったと考えた方が自然なのです。にもかかわらず、原告側は、ありもしない『1億円払え』発言ばかりでなく、事務所が12万円を用立てなかっため自殺に追い込まれた、というとんでもない主張までしてきたのです」

 判決は「萌景が入学準備をしていた全日制高校への進学ができないと考えたことが自死に少なからぬ影響を与えたいたものということはできる」と言及し、「直接的な契機を明らかにすることは困難である」としたうえで、被告に責任はないとした。

一方的な主張を垂れ流したワイドショー

 メディアに対しては、「遺族側の言い分を一方的に報じられた」という思いがある。確かにワイドショーは当時、「事務所のパワハラ」と連日大きく報道した。あるネットメディアの記者は、佐々木氏に電話をしてきて、「なんで、萌景さんを殺したんですか」などと一方的に質問を畳み掛け、3分足らずで切ってしまったという。

 遺族が言うがままの情報を彼らが垂れ流し続けた結果、佐々木氏は地元で誹謗中傷を受け、一時、会社は倒産寸前まで追い込まれた。

「もともと私の本業は農園経営なのですが、取引先が一社にまで減りました。10人くらいいた従業員もたった2人に。このままご飯が食えなくなって死んだら楽だなと思いました。でも、もしそうなったら、謂れなき誹謗中傷を認めることになる。私とともに被告になってしまったスタッフからは、『この裁判をはっきりさせるまでは、絶対会社を守ってください』と励まされました。『自分は外に出て働くから』と」

 そして、今日、佐々木氏の名誉が回復されたのだ。ワイドショーが一審判決をどう報じるかについても、これから注目していく必要があろう。

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