酒・タバコの我慢は健康寿命に悪影響? どんどん老いる人の特徴は「おむつや杖を嫌がる」

ドクター新潮 健康 その他

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「衰える」と「老いへの敗北」は違う

 高齢者専門の精神科医として約35年間、6千人を超える患者を診てきた経験でいえば、身体に生じた衰えを受け入れたくない人たちは、本来必要であっても杖やおむつといった“老人の象徴”を拒絶して無理する傾向にあります。

 しかし、「衰える」ことは決して「老いに敗北した」という意味と同義ではありません。筋力や認知機能の低下など、加齢による衰えはあらがってもやってくる。そうした現実を受け入れず、我慢を重ねて亡くなるより、足腰が弱くなったら杖をつき、耳が遠くなれば補聴器をつけ、使えるモノはうまく利用して楽をした方が、活動的で若々しく生きられるはずです。

 大人用おむつを勧められると、自分が老人扱いされたと感じて露骨に嫌がる方も多いと思いますが、そうした人は失禁を恐れるあまり電車やバスにも乗りにくくなり、ちょっとした遠出は難しくなる。結果、出不精になって老いが一層進むリスクを考えれば、おむつをはいた方がぐっと行動範囲も広がります。「できないこと」は無理せず諦めて、もっと「楽に生きる」ことの方が、より有意義な人生を送れると思いませんか。

人生を楽しむ余地

 さまざまな公的福祉のお世話になるのを恥ずかしいと思う高齢者もいますが、使えるものは利用するとの観点に立てば、そんなことはありません。これまで立派に保険料や税金を納め続けてきたわけですから、介護保険や生活保護だって利用するのは当然です。権利を行使する資格を持ちながら、お上の世話になるのはどうかと我慢するのはおかしな話です。

 デイサービスやヘルパーも同様で、まだまだ自活できると努力するのは大切だし立派なことですが、若い頃のように何も不自由なく暮らせるのは、70代くらいまでなのが実状です。80代を迎えれば避けようのない衰えが待っています。

 ならば、無用な意地を張らず他人の力を借りることができれば、その分人生を楽しむ余地が出てきます。デイサービスなどの施設に通って、入所者同士で語り合い合唱したりすれば脳が刺激される。面倒な家事からも解放されて、好きなことに使える時間も増えます。

 さらには多くの高齢者が楽に生きられない要因のひとつとして、健康診断の影響は大きい。診断における正常値は、あくまで統計的なはずれ値を除いたものであって、明確な根拠のあるものではありません。当然ながら個人差があり、基準値を超えたから病気になる、基準値内だから自分は大丈夫とはならないのです。80代を超えて元気なら「自分がエビデンス」だと胸を張り、多少の数値の変動があったからといって過度におびえることはないと思います。

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