51作の長期シリーズに…ヤクザを描くVシネマ「日本統一」はなぜ人気なのか

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駆け足で振り返ると…

 既に50作も出ているから、興味を抱いても途中参入しにくいと考える人もいるはず。どの作品も冒頭で過去の物語のダイジェストが流れるが、ここで1作から20作までの前半を超速で振り返ってみたい。ほんのサワリだが、雰囲気は掴めるはずだ。

《氷室と田村が不良からヤクザに》
(1)氷室と田村が侠和会三上組入り。侠和会会長の権田は日本統一の目標を口にする一方、若頭の工藤雅信(白竜)に跡を継がせることを表明(2)2代目侠和会会長となった工藤は組織内の人事改革を行う。それがもとで内部抗争が勃発。一部組員が組織を出る(3)九州の至誠会会長の川端忠雄(故・梅宮辰夫さん)が抗争の仲裁に乗り出すが、収まらず、田村は対立勢力の幹部を射殺。氷室は手打ちを破った相手を射殺(4)氷室が獄中で再会した秋本と兄弟盃を交わす(5)氷室が三上組から川谷組に移る話が持ち上がる。これに怒った三上組舎弟頭で大宮組組長の大宮和也(小沢和義)が氷室と激突

《氷室が人脈を広げる》

(6)氷室が川谷組組長に。大宮を慕っていた田村は大宮組組長となり、2人は反目する(7)侠和会の大阪進攻において2人が手柄を争う形になるが、最後は和解。川谷は侠和会の若頭になる(8)岐阜で抗争勃発。糸中建設が絡む手形パクリを氷室が解決。氷室と有力政治結社・大日本礎會会長の堀井謙介(工藤俊作)が兄弟分になる(9)氷室と田村が名古屋最大の組織・重光一家の跡目問題に介入(10)2人が香川・高松に進攻

《抗争が全国に拡大》

(11)四国をほぼ制圧(12)東北に進攻(13)東北抗争激化(14)東北をほぼ制圧(15)広島の西日本睦会にそそのかされた福井の坂下組が、工藤を襲撃

《反侠和会と反氷室の動き》

(16)坂下組組長に報復(17)名古屋と岐阜をほぼ制圧(18)秋本再収監。東日本最大の組織・丸神連合会2代目会長に三田太源(菅田俊)が就く。初代は瀧島彪雄(故・津川雅彦さん)。氷室は侠和会若頭補佐に(19)熊本で氷室が西日本睦会に襲われる。危機一髪(20)西日本睦会に報復する一方、侠和会で反氷室派の工藤会も氷室を襲撃。田村が返り討ちにするーー

 ヤクザが登場する実録路線映画やVシネマには意味不明なヤクザ業界用語が多用されるが、この作品は極端なまでに少ない。

 登場するヤクザ業界用語はこの程度だ。「返し=報復」「座布団=ヤクザとしての地位」「めくれる=バレる」「破門=追放処分」「絶縁=永久追放処分」「若頭=組織のナンバー2、基本的には組織の次期トップ」「掃除屋=死体処理係」。あえて平易な言葉を使うことにより、広く受け入れられるようにしているのだろう。

 この作品には物語以外にも見どころがある。その1つは本宮と山口のアクションだ。

 37作から丸神会最高顧問・迫田常夫役で登場している中野英雄(57)は「本宮君は芸能界最強。レベルが違う」と証言している。哀川翔も「本宮は強い」としている。

 なにしろ本宮は高校時代、ボクシングでオリンピックを目指していたくらい。今も私設の総合格闘技チーム「本宮塾」の塾長を務めている。作品内で見せるパンチやキックはとんでもなく速い。

 山口の動作も俊敏。それも納得である。山口は千葉真一さんが主宰していた「ジャパンアクションクラブ(JAC)」のエース級の1人だったのだ。

 この作品は最近激減したアクション作品としても楽しめる。それも人気の理由だろう。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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