離婚を切り出した妻の“30年分の愚痴”に58歳夫の言い分 冷蔵庫の食材を捨てる姿にムッとして何が悪い?

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年下女性と「不倫ではない関係」

 そして今。確かに圭太さんには「好きな女性」がいるのだという。ただ、妻が疑っているような関係ではない。

「完全にプラトニックです。相手は10歳年下の既婚女性。仕事関係で知り合い、子どもの受験相談に乗ったりしているうちに、ふたりともプロ野球好きだとわかって……。ときどき一緒に観戦に行きます。ビールを飲みながら試合を見て、今はあまり大声を出しての観戦はできないけど、それでも好きなチームが勝つと思わず声が出てしまいますね。試合後はそのまま解散です。もちろん、僕には下心がありますが、性的な関係を持ってしまうと、いつかは終わりが来てしまう。それならプラトニックのままでいいと思ったんです。彼女にもそのことは言いました。私もそう思うと言ってくれた。そのほうが罪悪感なく会えるからって。これが恋かどうか僕にはわかりません。いつも彼女のことを考えているのは確かだから、妻の指摘は当たっているのかもしれない。でも不倫かどうかは、判例を見てもやはり性的関係のあるなしで決まるんですよね。だから不倫ではないと思っています」

 相手への思いは強い。それでも形式的には「不倫ではない関係」なのだ。妻からどんなに責められても「不倫はしていない」と断言し続けているのは、そんな背景があるからだ。

子供に相談するも…

 一連の話し合い、彼に言わせれば「妻の30年分の愚痴」について、圭太さんは28歳の息子、26歳の娘、それぞれに相談したいと連絡した。ふたりとも今は家を離れて働いている。どちらもまだ結婚はしていない。

「それがショックなことに、息子は『今、忙しいからしばらく戻れない』と返事がありました。娘にいたっては『お母さんの希望を聞いてあげれば?』と。考えてみれば、息子とも娘ともじっくり話をしたことがありませんでした。大学受験のときも相談されていないし、子どもは子どもで好きなように生きていけばいいと思っていた。ただ、ふたりとも都内で働いているのだし、まだ家を出て行かなくてもいいだろうと感じたことはありました。それでもふたりは離れていった。もしかしたら僕と離れたかったのかもしれない。そう思ったとき、ちょっと衝撃が走りました」

 世の中には、息子や娘とサシで飲みたいという父親は多いだろう。だが圭太さんはそう思ったことがないという。恥ずかしい、と。親子はそんなにベタベタするものじゃないとも彼は言った。それもまた「昭和的感覚」なのだろう。

 一方、妻は子どもたちが味方をしてくれると信じている。それもあって、強気に出ているのかもしれないと思い至った。

「今、離婚するのは損だと思うと妻には言っています。実際、妻がひとりになっても経済的に生活していけないでしょう。でも妻は慰謝料をくれれば、あとは子どもたちも応援してくれると言い張っています。子どもに迷惑をかけるな、と言いました」

 そもそも暴力をふるったわけでもないし、借金で苦しめたこともない。「昭和」な感覚で妻を苦しめたことはあるのかもしれないが、意図的に嫌がらせをしようと思ったことなど一度もない。30年暮らしてきて、なぜそこまで思い詰めたのか。それを知りたいと彼は思った。

「『私の人生、何だったんだろうと思うようになった』と妻は言うんです。僕もそう思っている。じゃあ、この結婚が間違いだったのかというと、ふたりの子どもに恵まれて、平凡ながらも社会に無事に送り出した。それで家庭としての役割はじゅうぶん果たしたのではないかと思うんですよ。結婚して30年、いわゆるラブラブなんて無理でしょうしね。ただ、妻を見ていて思うのは、彼女は今の時代にしっかり適応している。だから離婚という発想も出てくる。僕はやっぱり昭和から抜けていないんでしょう。それだけはよくわかりました」

 最後は自らを「古い価値観に縛られている」と認めた圭太さん。だが、古い価値観が完全にいけないというわけでもないだろう。時代は流れていくが、すべてに適応する必要もない。

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