大黒摩季が語る子宮全摘出と妊娠の断念 「大好きな音楽を恨むほどどん底に」

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お節介な人の重要性

 ところが、半年くらいそんな鬱屈していた日々を過ごしていたら、いつの間にか絶望することに飽きている自分がいました。

 今振り返れば、良い意味でお節介な同級生やマネージャーが身近にいて、その人たちが何かと声をかけてくれたのがよかったような気がします。私はこんなに絶望しているのに、この人は何も悩んでいないなと腹立たしくもあったんですが、実はこうなったらしめたもの。人のことを責められるようになってきたら、それは元気が出てきたって証ですから。

 だから、私みたいに病気になって大事なものを失い、どん底にいる人には、泣きたいだけ泣いて、味わうだけ絶望感を味わうこと、それが最終的には立ち直りの早道だと思いますね。だって、辛いことがあったら落ち込むって自然なことじゃないですか。自然にしていれば、人間、また自然と人恋しくなって、勝手に希望を見出そうとする。希望がないと人間生きていけないものです。私も、目が取れるんじゃないかというくらい泣いて、そうやって泣き過ぎたら、今度は自然と泣けなくなりましたから。まるで身体から水分が消えちゃったみたいに。だから、絶望の中にいる時は溜め込まないで全部吐き出す。出さないと、本当に精神を病んじゃうと思うんです。

 そのためにも、周りにひとりふたりはお節介な人を確保しておくといいです(笑)。別に説教してくるわけじゃないけど、何かと声をかけてくれる人を。人間、完全に孤立するとやっぱり死にたくなっちゃいますからね。

今が人生の最高の成長期

 なんて偉そうなことを言っても、正直、今でもふと闇に吸い込まれる時があるんですけどね。完全に吹っ切れているかといえばそうではない。悲しみは悲しみとして冷凍保存されたまま……。

 でも多分、人生はつじつまが合うようにできている。私は子どもを産んで子孫を残す「Aチーム」にはなれなかったけど、芸事で人を鼓舞し、癒やし、盛り上げる役割の「Bチーム」に入れてもらった。

 そしてBチームとしてはラッキーの連続で、おかげさまで、5月27日でちょうどデビュー30周年。Aチームではできなかった分、Bチームを思いっきり楽しんで! 最近、そんなふうに言われている気がするんです。ぶっちゃけ、今が人生最高の成長期で、歌手としては初めて絶好調です!

 何しろ体調が万全というだけで、活動休止前から比べてキーが四つも伸び、52歳で4オクターブ半も出るんです! やっぱり未来は捨てたものじゃない! これぞ、究極の損して得取れかもしれないですね。

大黒摩季(おおぐろまき)
シンガーソングライター。1969年生まれ。92年にデビューし、同年に出した「DA・KA・RA」がミリオンセラーとなり日本レコード大賞新人賞受賞。2010年に活動を休止。16年に6年ぶりの新曲を発表した。

週刊新潮 2022年5月5・12日号掲載

特集「『転機』とするか『折り合う』か『闘う』か…著名人が明かす『病』との向き合い方」より

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