「エンタメ」が鉄道業界の苦境を救う可能性 「ニコニコ動画」の功績は大きかった

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 4月29、30日、千葉県千葉市の幕張メッセで「ニコニコ超会議2022」が開催された(23~30日はオンライン開催)。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するという理由から、2020年と2021年はオンライン開催のみとなっていたが、今年は29、30日のみリアルイベントとして復活。いまだコロナ禍が完全に収束していないことや2年間のブランクがあったこともあり、ブース出展数や来場者数は奮わなかった。

 一時期、ニコニコ動画の人気は凄まじかったが、いまやネット動画の代名詞はYouTubeに奪われている。ニコニコで配信をしていた生主と呼ばれるユーザーがYouTubeに軸足を移すことも珍しくない。そして、YouTuberたちの人気は歳月を経るごとに増し、芸能人と比べても遜色なくなっている。

 しかし、ニコニコがネットで一時代を築いてきたことは間違いなく、YouTubeでも不動の人気を保つ“歌ってみた”“踊ってみた”“ゲーム実況”などはニコニコ動画が先鞭をつけてきたコンテンツでもある。

 筆者はオンライン開催のみだった2020年と2021年を除き、2012年に開催された第一回から今年まですべてのニコニコ超会議の会場に足を運び、取材をしてきた。

 それらを通じて感じることは、約10年という歳月でYouTubeに逆転を許してしまったが、ニコニコ動画(とニコニコ超会議)こそがネット界におけるエンタメを牽引してきたパイオニアだということだ。

 今年復活したニコニコ超会議では、前述した「歌ってみた」「踊ってみた」「ゲーム実況」といった人気コンテンツのブースが見られた。

 他方、「超鉄道」と銘打った鉄道を扱うブースは姿を消し、鉄道関連はオンラインのみになっていた。

ニコニコの「鉄道」への注力

 10年もニコニコ超会議を取材していると、関係者から裏話を教えてもらう機会は多々ある。意外に思われるかもしれないが、「超鉄道」はニコニコ側が“将棋”“歌舞伎”“相撲”“政治”などと並んで力を入れていた分野のひとつだった。

 例えば、ニコニコ超会議では会場に設営された鉄道ブースのほか、JRの協力により超会議号という団体臨時列車を運行。同列車はニコニコ超会議の来場者を対象にしたものだが、開催年により運行ルートも使用された車両も変わった。こうした臨時列車を仕立てるのは関係各所とすり合わせなければならない。それらを手配するのは、かなり大変な作業である。

 特別に仕立てる団体臨時列車は、鉄道の知識だけではなくファン心理を察知する能力も必要になる。これは、単純に鉄道に詳しいというだけではできない芸当といえる。

 ニコニコ超鉄道は、ニコニコの中の人が鉄道に詳しいから実現できた企画ではない。ニコニコ側には、以前から鉄道をやりたいという気持ちはあった。しかし、どういったコンテンツが鉄道ファンの心を掴むのかがわからない。そこで音楽プロデューサーの向谷実さんに企画を一任していた。

 向谷実さんは、超がつくほどの鉄道ファンとして知られる。向谷さんの本職はミュージシャンで、鉄道各社の発車ベルや接近メロディなどを手掛けている。さらに、向谷さんは実業家としての一面もある。自身が経営する音楽館という会社で、鉄道シミュレーターを開発している。

 鉄道シミュレーターとは、実写映像を用いながら仮想空間で運転士・車掌などの実務を体験できる機械・装置のこと。これらは鉄道博物館などに設置されているほか、タイトーが「電車でGO!」をリリースして、広く知られるようになった。

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