独自入手 「知床遊覧船事故」 渦中の運航会社が社員に配った「経営計画書」の中身

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 北海道・知床沖で、乗客乗員26人が乗った観光船「KAZUⅠ」が沈没した事故は、これまでに14人が遺体で見つかり、現在も残り12人の捜索活動が続いている。その一方で、事故当日、荒天が予想される中で出航を強行した運航会社「知床遊覧船」の経営体質や、桂田精一社長(58)にも注目が集まっている。そんな中、デイリー新潮編集部は、かつて同社が社員に配っていたという、経営計画書を独自入手した。

夢が破壊される確率の低い安全な場所

 全128頁にも及ぶ「経営計画書」は、その名前から連想されるような書類の束ではなく、新書サイズに製本された、冊子型。所有者が自ら書き込めるスペースも十分ある、いわゆる社員手帳に近いものといえるだろう。表紙には重々しく「社外秘」と書かれており、恐る恐る頁を開くと、男女のイラストが目に飛び込んできた。〈背筋を伸ばし、左手を上にして手を組みましょう〉――。姿勢をレクチャーしたものだが、顔だけ妙にリアルに描かれているのが印象的だ。

 身だしなみチェックリスト、経営理念など、パラパラとめくっていき、次に指が止まったのは、手書き風の文字。「経営計画発表にあたって」というタイトルのその文章は、桂田社長の署名で、経営に対する思いが綴られていた。全文は写真をご覧いただくとして、その一部を抜粋する。

〈地震・津波・原子力災害や大風(原文ママ)で夢が破壊される確率の低い安全な場所
「知床ウトロ」で一緒に基盤を作り世界に発信しよう!〉

 皮肉にもこの会社が世界に発信したのは、史上稀に見る凄惨な海難事故となってしまった。

速く波に強い船を

 社長の“熱い”檄文を通り過ぎると、「クレーム」「お客様」「料理」といった項目ごとに、社としての方針が事細かに書き連ねられている。とりわけ注目すべきは、観光船に関する方針だ。詳しくは写真リンクをご参考いただくとして、ここも一部を抜粋する。

〈4 予約
週間天気を見て天気の悪いと予想される日はⅠ45人Ⅲ35人までとする。人数はもう一度確認する。〉

〈5 新造
しっかりした計画を立てる。速く波に強い船を探す。〉

「天気の悪いと予想される日」には、他に確認すべきことがあるはずだが……。

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