高齢者の「受診控え」で「認知症患者が300万人増加」 コロナ自粛の弊害を専門医が指摘

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「認知機能が低下するのは当たり前」

 認知機能の低下について、鳥取大学医学部教授で、日本認知症予防学会代表理事の、浦上克哉氏が、

「自粛生活によって認知機能が低下してしまった方は、たくさんおられます」

 と、さらに掘り下げる。

「正常だった認知機能がやや低下し、認知症の一歩手前のMCI(軽度認知障害)になった方も増えています。また、MCIの方向けの認知症予防教室などがコロナ禍で閉鎖され、認知機能がさらに悪化することも、すでに認知症の方が重度化してしまった事例もあります。認知症は20~30年かけてゆっくり進行する病気であることが、最新の研究でわかっていますが、環境が極端に悪くなると、病状が進んでしまう。外出は控えましょう、会話を減らしましょう、といわれてきましたが、外出も会話も認知症予防に有効とされていたこと。それをやめなさいといわれれば、認知機能が低下するのは当たり前です」

自分の状態を診断する方法

 だが、認知症の回復は困難でも、MCIならまだ戻せる。その症状は、

「もの忘れだけでなく、意欲の低下も重要です。たとえば、積極的に出かけていた人が、外出自粛を強いられて、いろいろなことへのやる気を失い、MCIによって拍車がかかります。認知症予防には運動、知的活動、コミュニケーションの3点が大事。とはいえ、外出を自粛しても屋内でできることは多いのですが、意欲が低下してやる気を失うと困難で、そのために認知機能がさらに低下するという悪循環に陥ります。また、感情が不安定になる方もいます。なんでこんなことを思い出せないのか、という思いが不安や葛藤につながるのです。家族に怒られて感情が不安定になり、怒りっぽくなることもある。落ち込んで、うつ状態になることもあるといわれます」

 こうした状態を自分で診断する方法はあるのか。

「以前できていたことができなくなった、ということは、一つのヒントになると思います。以前はなんでも記憶できていたのに、いまはすぐ忘れる。おしゃれに気を使って、季節に合わせてファッションを楽しんでいたのに、全然気にしなくなり、汚れた服でも平気で着るようになった。そういうのは認知機能低下の表れだと思います。説明書を見てスムーズにできていたことに、時間がかかるようになった、というのもMCIの症状の一つです」

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