独立リーグ・高知の新たなる挑戦…主将はアフリカの“最貧国”からやってきた

スポーツ 野球

  • ブックマーク

Advertisement

「牛を飼う球団」

 かつて高知球団には「農業事業部」という、野球の球団とは思えない部署があった。選手たちは、グラウンド横の畑で野菜を作り、地域の幼稚園児と一緒に田植えを行い、収穫した米は、自分たちの胃袋に収まった。

 一時期は、高知農業高から購入した子牛を2年にわたって育てたことがある。牛を担当する球団職員も置き、育て上げた後に食肉に加工し、それを試合開催時の球場内で、コロッケにして販売したこともあった。

 それは「地域密着」のプロスポーツという理想のフレーズを、地域のニーズと特色に則った形で体現させ、地域の人たちとともに球団を育て上げてきた、一つの「形」でもあった。

「僕が来た頃は、まだ牛がいました。『牛を飼う球団』のときでしたね」

 そう笑いながら振り返った監督の吉田豊彦は、1987年(昭和62年)のドラフト会議で南海(現・福岡ソフトバンク)に1位指名された左腕投手だ。ダイエー、ソフトバンク、近鉄、阪神、楽天で現役生活20年、通算619試合に登板して、通算81勝17セーブ23ホールドを挙げている。

 1994年には開幕投手も務めた男は、2012年から高知でコーチを務め、2020年から監督に就任した。同年のNPBドラフト会議では、石井大智が阪神から8位指名を受け、2021年のドラフトでも宮森智志が楽天の育成1位指名、さらに広島を自由契約になった後に高知へやって来た藤井皓哉がソフトバンクに育成入団。藤井は2022年の開幕1軍の座を勝ち取り、リリーフの一角を担う活躍も見せている。

次ページ:高知市内まで往復で1時間強

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[2/6ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。