独立リーグ・高知の新たなる挑戦…主将はアフリカの“最貧国”からやってきた

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2年連続で外野手のベストナインに

 すっかり、高知の生活に馴染んでいる。来日後、約2年の練習生生活を経て、2015年8月、ラシィナは選手登録された。

 来日直後は、フランス語の通訳がついていた。しかしいまや、テレビのバラエティ番組を見て「笑えるようになりました」。ニュース番組での内容も「だいたい分かります」。日本語でのコミュニケーションには、全く支障がない。

「8年もいたら、何とかなるじゃないですか」

 佐川寮での生活で、チームメートから「肩」「肘」といった、野球に関連する体の部位を覚えていったのが、日本語習得への第一歩だったという。

 主将に選ばれたのは「一番の古株ですから」。重ねて強調するが、この「古株」という単語も、ラシィナから発せられた言葉だ。

 そして、ラシィナが主将として率いた2021年後期、高知は2009年後期以来の優勝を果たした。選手としても、2020年に30打点でリーグ打点王、2020、21年には2年連続で、外野手のベストナインにも輝いている。

 来日当初は「ブルキナファソでやったことがなかった」というピッチングマシンでの打撃練習で、タイミングが取れずに空振りを連発していたという。

 そんな青年が、リーグのトップクラスの実力を誇るプレーヤーに成長した今、次なる目標に掲げたのが、日本の「教育」を受けることだった。(第2話に続く)

喜瀬雅則(きせ・まさのり)
1967年、神戸市生まれ。スポーツライター。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当として阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の各担当を歴任。産経夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。産経新聞社退社後の2017年8月からは、業務委託契約を結ぶ西日本新聞社を中心にプロ野球界の取材を続けている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)、「不登校からメジャーへ」(光文社新書)、「ホークス3軍はなぜ成功したのか」(光文社新書)、「稼ぐ!プロ野球」(PHPビジネス新書)、「オリックスはなぜ優勝できたのか 苦闘と変革の25年」(光文社新書)。

デイリー新潮編集部

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