スウェーデン「サーブ」とプーチンの意外な関係 どうすればロシア軍を撃退できるかという思想

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対ロシアという現実

 ところが80年代ごろから、両部門の採算性が悪化してしまう。

「航空機部門は1999年に廃止されました。乗用車部門は2000年に子会社化し、更に他社にブランド権などを売却しましたが、今はブランドも消滅してしまいました。サーブという名前の車は、もう生産されていません」(同・軍事ジャーナリスト)

 民生部門は縮小が相次いだが、軍需部門は今でも高く評価されている。社に多額の利益をもたらしているのだ。

「サーブが開発する兵器は基本的に『どうしたら侵攻してきたロシア軍を撃退できるか』という設計思想で開発されます。例えば『エリア88』に出てきた『サーブ35 ドラケン』は『2キロの直線道路から離着陸が可能』、『10分以内の給油、再武装』という性能を持っています。これはロシアとの現実的な戦闘を想定しているからです」(同・軍事ジャーナリスト)

 ロシア軍が攻め込んできた場合、空港が急襲され、使用不能になるかもしれない。その場合は、数キロの直線道路を使って離発着を行うというわけだ。

「軍用機は通常、対空の戦闘機、対地・対艦の攻撃機、大規模な空襲を行う爆撃機などと、用途に応じて製造されます。ところがドラケンは改修を重ね、最終的には対空戦闘、対地攻撃ができるマルチロール機に変身しました。戦闘機と攻撃機の性能を併せ持つという特徴があり、敵の戦闘機を撃墜するだけでなく、敵の戦車や軍艦を攻撃することも可能なのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 もしロシア軍が攻めてきたら、ドラケンはロシアのミグ戦闘機を撃墜し、更にワルシャワ条約機構軍の主力戦車だったT55戦車も破壊する。

 弾薬が尽きたら戻り、直線道路に着陸。味方から10分で燃料と弾薬の補給を受けると、急いで最前線に帰る──こんな使用法がイメージされているわけだ。

「ドラケンの機体は可能な限り小さく作られているので、洞窟や納屋に隠すことも可能です。スウェーデンがロシアと戦争を起こした際に発生する極めて具体的な“ニーズ”を想定して開発されたのです」(同・軍事ジャーナリスト)

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