スウェーデン「サーブ」とプーチンの意外な関係 どうすればロシア軍を撃退できるかという思想

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仮想敵はロシア

 だがサーブは、売上のうち8割以上を軍事部門が占める。実は世界でも屈指の軍需企業なのだ。中東への兵器販売が紛争の原因になっていると、国際社会から問題視されたこともある。

「スウェーデンは科学技術立国としても知られます。例えば、新型コロナのワクチンで有名になった医薬メーカーのアストラゼネカは、イギリスのゼネカとスウェーデンのアストラが合併して生まれました。他にもスウェーデンは冶金(やきん)の技術に優れていますが、鋼材の質は兵器の質に直結します。軍需産業を得意とする技術的土壌があったのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 更にスウェーデンの外交方針も、自国の軍需産業に大きな影響を与えている。武装中立が国是に等しく、今も昔もロシアが仮想敵だ。

「スウェーデンとロシアの歴史は複雑ですが、18世紀にバルト海の覇権を巡って戦争が勃発するなど、少なくとも近代以降は強い緊張関係にありました。第二次世界大戦の直前にはバルト3国がソ連の軍門に降り、大戦が勃発するとソ連は隣国のフィンランドに侵攻しました。スウェーデンは常にソ連=ロシアが自国を侵略してくる可能性を意識し、“専守防衛”に力を注いできました」(同・軍事ジャーナリスト)

乗用車への挑戦

 その一例として、徴兵制がある。スウェーデンでは18歳の男女は兵役に就かなければならない。ロシアを意識した政策であることは論を俟たない。

「正確に言えば、2010年に徴兵制を廃止したのですが、ロシアがクリミアを併合したことから17年に復活させたのです。スウェーデンの住居には、必ず戦争時のマニュアルが保管されています。核シェルターの普及率は100パーセントで、冷戦時には核武装を本気で検討したこともありました。武装中立が国是のためNATO(北大西洋条約機構)には加盟しませんでしたが、常にロシアには厳しい態度で臨んできました」(同・軍事ジャーナリスト)

 そんなスウェーデンの歴史は、サーブの歩みに大きな影響を与えた。同社は1937年、スウェーデンの軍用機を開発するために設立された。

「第二次大戦の終わりが見えてくると、軍用機の需要が減少すると予想されました。そこでサーブは、民生用の製品でビジネス展開を行う必要に迫られます。1944年から一般の航空機を、46年からは乗用車の生産を開始しました。サーブ・900もそうした流れの中で誕生したのです」(同・軍事ジャーナリスト)

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