韓国人はなぜ「ウクライナ」に冷たいのか ゼレンスキー演説を聴いたのは国会議員の2割

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恐中病で恐ロ病

――なぜ、韓国人はウクライナに冷淡なのでしょうか。

鈴置:ロシアと敵対する覚悟がないからです。韓国人にとって、ロシアの前身たるソ連は一貫して安全保障上の脅威でした。

 朝鮮戦争で直接戦ったのは北朝鮮と中国ですが、その背後にはソ連がいた。正式に参戦しなかったものの、北朝鮮の識別マークを付けたソ連空軍機が日常的に米軍機と空戦したのです。朝鮮戦争の後も、領空を誤って侵犯した大韓航空機がサハリン付近でソ連の戦闘機に撃墜されました。1983年9月のことです。

 日本にとってもソ連は脅威でしたが、日露戦争に勝っています。この差が決定的なのです。勝ったことがなく、常に圧迫されてきた韓国人はロシアを敵に回すなどとは、思いもよらないのです。

――でもロシアの蛮行を許せば、中国の台湾侵攻を誘発しかねません。

鈴置:それは日本人の発想です。韓国人は、中国を念頭にロシア批判に乗り出せば中国も敵にする、と考えるのです。台湾への侵攻を牽制するよりも、中国に嫌われないことの方がはるかに重要なのです。韓国は中国との戦争にも勝ったことはありません。新羅と唐の戦いでは「勝った」ことになっていますが。

 韓国の国会議長以下8割の議員がゼレンスキー演説に参加しなかったのはある意味、当然です。参加者名簿に載れば、後で中国やロシアからいじめられると韓国人なら恐れます。

「見栄っぱり」の韓国人

――だったら、そもそもゼレンスキー演説など受けねば良かった。

鈴置:韓国には3月中旬頃、ウクライナ政府から演説の打診があったようです。が、国会は後難を恐れて相当に逡巡しました。先に引用した「世界で24番目」と遅さを批判したキョンヒャンの記事。「演説を推進中と報じられた後、ほぼ3週間たってようやく実現した」とも書きました。「逡巡」も暗に批判したのです。

 韓国に住むウクライナ人のドミトロ・ウィ氏は中央日報の「【私は告発する】文氏と考え方が異なる尹氏…平和叫んで戦争起こされたウクライナの現実を直視すべき」(4月4日、日本語版)で、「『共に民主党』の反対でゼレンスキー大統領の議会演説が[いったんは]取りやめになった」と書いています。

 しかし、主要国の国会でゼレンスキー演説が相次いで実施され、ことに3月23日には日本でも開かれた。そこで韓国の国会は「日本に負けるわけにはいかない」と考え、一度は断ったか返答を保留していた演説を、韓国側から改めて申し込んだのです。

――要はすべて「見栄」なのですね

鈴置:その通りです。ゼレンスキー演説を開いたのも「見栄」。議員が集まらなかったと嘆くのも「見栄」。それをロシアに利用されそうだと慌てるのも「見栄」。

 世界中の人々がロシアの侵略をどうしたらやめさせられるかを考え行動している時に、韓国人だけは自分が世界にどう見られるかを気にしているのです。

 ウクライナにすれば迷惑な話です。国の存亡がかかっている時に、ろくに助けてくれるわけでもない韓国人の見栄のために、大統領のビデオ演説を作って送ってやらねばならないのですから。

 中央日報の政治漫画(4月13日)が韓国国会の自分勝手さを突きました。映像の中ではゼレンスキー大統領が「自由民主主義」と書いた紙を持ってこちらを見つめている。しかし、外の椅子には誰も座っておらず、「参加しない自由」という紙だけが置かれている。ゼレンスキー大統領の額には汗が……。漫画の見出しは「招待しておいて…」です。

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