韓国人はなぜ「ウクライナ」に冷たいのか ゼレンスキー演説を聴いたのは国会議員の2割

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韓国は民主国家か

――最後にもう一度、聞きます。ロシアが怖いことも分かりました。中国の顔色を見ていることも分かりました。でも韓国は、自由と民主主義の側に立たずして、それを守れると思っているのですか?

鈴置:そもそも、韓国は自由と民主主義を守ろうなどと考えてはいません。

――韓国は民主主義国家になったと思っていました。

鈴置:新聞への検閲や拷問がない、あるいは公正な選挙が行われている、という意味では民主主義国になったのでしょう。でも、自由と民主主義を死に物狂いで守ろう、とまでは考えてはいません。

 その証拠に、自由や民主主義の基礎となる法治がどんどん崩れていても――もともと怪しいのですが、気にも止めません。未だに「我が国はアジア最高の民主主義を実現している」と多くの韓国人が本気で信じている。少なくとも、欧米や日本型の民主主義を目指してはいないのです。

――では、民主化とはいったい何だったのですか?

鈴置:私も今、それを考えているところです。1987年の民主化をもたらしたのは独裁政権に対する国民の怒りでした。デモの現場でひしひしと感じたものです。機動隊から逃げ惑う学生を街の人々は自分の店に匿いました。ホテルの従業員らは屋上から学生らに大量のおしぼりを投げました。顔や手足にくっついた催涙弾の粉末を拭け、というのです。

 拷問して平気で国民を殺す軍事政権は許せないと、普通の人も考えた。ただ、彼らは無茶苦茶な現状をなんとかせねばいけない、と考えただけで、西欧型の民主主義の実現をゴールに据えていたわけではなかった。

ここでもまた「見栄」

――知識人もそうでしたか?

鈴置:知識人は「日本や西欧を目標にする」と明確に表明していました。韓国を「遅れた国」ととらえていたからです。彼らの原動力は恥ずかしさでした。でも、今となってはそれが裏目に出た気がします。

 世界から「民主化した」と認められれば、つまり恥ずかしさから逃れられれば十分ということになってしまう。自分の国の民主政治の仕組みが壊れ始めようと、世界で自由と民主主義が侵されようと、「民主国家」のブランドさえ確保できていればよいのです。

――「見栄」ですね。

鈴置:そうです。韓国人は自分の「見栄」さえ満足できれば、ウクライナがどうなろうと構わないのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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