プーチン、150人スパイ粛清で権力基盤は崩壊寸前 諜報機関トップの“合成動画”を敢えて流した狙い

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安全保障会議の謎

「FSBの内部には、ウクライナ侵攻に反対する職員もいたようです。彼らはアメリカなどの西側諸国やウクライナ政府に、侵攻に関する内部情報を漏らしていたという報道もあります。そもそも逮捕を報じられたセルゲイ・ベセダ氏もダブルスパイで、西側諸国にロシアの機密情報を伝えていたのではないかという指摘も出ています」(同・山田氏)

 どうやらプーチン大統領も、FSBに問題があることは事前に察知していたらしい。それを浮かび上がらせるのが、侵攻3日前の2月21日に開かれた安全保障会議だ。

 この様子を収めた動画が公開されている。中でも注目を集めたのが、SVRの長官を務めるセルゲイ・ナルイシキン氏(67)をプーチン大統領が問い詰める場面だ。日本でも民放キー局の情報番組などが映像を放送した。

「実は、あの動画で出席者の時計に注目した関係者がいるのです。調べてみると、場面ごとに時刻が違っていることが分かりました。どうやら本当は、事前に行われた会議映像を編集で繋いだようなのです。そんな“フェイク動画”を、わざわざプーチン大統領が配信させました。当然ながら、何らかのメッセージが込められていると考えるのが自然でしょう」(同・山田氏)

戦果を焦るプーチン大統領

 謎を解く鍵は、ナルイシキン氏だ。彼は単なるSVR長官ではなく、ロシアにおける諜報機関の責任者の一人だと考えると、見えてくるものがあるという。

「諜報機関が報告してくるウクライナの状況分析や侵攻作戦の内容など、かなりデタラメなものもあるとプーチン大統領が侵攻直前になって気づいたようなのです。そこでナルイシキン氏を叱りつける動画を作らせて公開することで、諜報機関の職員に『お前たちがデタラメな仕事をしているのは分かっているぞ』と恫喝したのでしょう」(同・山田氏)

 プーチン大統領はその後、作戦がうまくいかなくなる可能性も把握した。だが、作戦の停止を命じるには遅すぎた。実際、作戦が進むにつれ、戦況は極めて悪くなっていく。

 となると、キーフを目指していた部隊を退却させ、再編成して東部に送ったことの意味が変わってくる。

 これまで多くのメディアは、プーチン大統領が単純にロシア軍の立て直しを命じたと報じてきた。だが、プーチン大統領は“苦境”に直面しており、ウクライナ侵攻どころの騒ぎではないのかもしれない。

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