ロシア軍の戦車は弱すぎで話にならない…なぜウクライナ軍のミサイルにやられまくったのか

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“モンキーモデル”と言い訳

 今回のウクライナ侵攻で、ロシア軍の戦車は“バトルプルーフ”の結果、役立たずだと明らかになってしまったわけだ。

 実は、ロシア製戦車の性能が疑問視されたのは、これが初めてではないという。

「1990年に起きた湾岸戦争の際、イラク軍のT-72がアメリカ軍の戦車M-1やイギリス軍の戦車チャレンジャーと戦ったのですが、こちらも大敗を喫しました。世界の軍事関係者が『ひょっとしてロシア軍の戦車は弱いのではないか?』と疑問を抱いた嚆矢だったのですが、それでもT-72を擁護する見方も強くありました」(同・軍事ジャーナリスト)

 まず指摘されたのが、「操縦していたのがイラク軍の兵士」という問題だ。イラク兵は士気が旺盛、訓練度が高い、というわけではない。

「とはいえ、イラク軍のせいにするには、あまりにも一方的な敗北でした。最終的にロシアの軍需産業は、T-72に問題があることを認めざるを得なくなったのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 兵器の世界には“モンキーモデル”という概念がある。兵器は自国の安全を守るために開発、生産される。高性能の兵器を他国に販売すると、自国の防衛が脅かされてしまう。

T-90で勝負

「そのため、自国で使う兵器の性能からワンランク落とし、価格も安くした輸出専用の兵器を“モンキーモデル”と呼びます。これ自体は当たり前のことです。ロシア側は『湾岸戦争でイラク軍が使用したT-72はモンキーモデルでした』と釈明し、それはある程度、受け入れられました」(同・軍事ジャーナリスト)

 だが、ロシアの軍需産業が、プライドを傷つけられたのは想像に難くない。そこで彼らはT-90で捲土重来を期した。

「湾岸戦争直後に開発されたT90はT72の発展改良型戦車で、T72より高性能を謳っただけでなく、『モンキーモデルは作りません』ということも大きく宣伝されました。輸出を強く意識し、1両あたり約150万ドルと、安価な価格設定ながら高性能を謳う、まさにロシアの軍需産業にとっては“渾身の一作”でした」(同・軍事ジャーナリスト)

 どこの国の軍隊でも、戦車を頻繁に買い換えるということはあまりないという。1両が数億円もするため、コストがかかりすぎてしまうからだ。

「ロシアの軍需産業にとってT-90の発売は、T-72の改造キットを販売するビジネスチャンスでもありました。各国の軍隊に『T-90の購入は難しくても、今あるT-72をT-90の性能に近づける改造が可能です』と売り込むわけです」(同・軍事ジャーナリスト)

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