共同通信で相次ぐ「誤報」 猪苗代湖・8歳児死亡のボート事故では「被告」から前代未聞の「訴訟」

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問題の動画は「不存在」

 訴状によると、〈福島県警は,被疑者であった原告や報道機関に対し,当初から本件記事が誤報であることを明言〉しており、起訴後、吉野弁護士が検察官に動画の証拠開示を求めたところ、そのような動画は〈不存在であると回答し、本件動画が存在しないことを明らかにした〉という。

 吉野弁護士が続ける。

「事故直後に“やばい”と発言した動画が存在すれば、まさに動かぬ証拠になるでしょう。事故を認識しながら同乗者に口止めし、救護措置を講じないまま立ち去ったのなら、情状面にも極めて大きく影響します。被告に過失があったとされるならば、刑罰の重みを決定づける事情のひとつになりかねません。しかし、共同通信があそこまで断定的な報じ方をしておきながら、問題の動画は客観的に存在しないのです」

 佐藤被告側からの指摘を受けて、加盟社の多くはネット上に掲載していた記事を削除しており、渦中の共同通信の記事もネット上で探し当てることができなかった。

 共同通信社に問い合わせると、以下の回答が寄せられた。

「係争中であり、詳しい回答は差し控えますが、記事は適正な取材に基づいて配信したと考えております。個人情報を含む事件や事故のデジタル向けコンテンツは、原則として一定期間経過後に削除するよう対応しています」

 無論、少年の命が失われ、その母親が両足切断の重傷を負ったという事実は重大極まりない。裁判においてボートの操縦者である被告の責任が問われるのは当然であろう。だが、報道が事実であるかどうかはまた別の問題。日本を代表する通信社の屋台骨が大きく揺らいでいる。

デイリー新潮編集部

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