信頼度最下位「朝日新聞」はどこが嫌われているのか

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オックスフォード大学のレポート

 英国のオックスフォード大学ロイター・ジャーナリズム研究所が発表した「Digital News Report 2018」の中の日本のメディアに関する1つのグラフが話題になっている。

 140ページ以上からなるこのレポートの中で、世界各国と並べて日本の現状についても2ページが割かれている。そこに掲載された「信頼度スコア」が問題のグラフ。

 10点満点で信頼度を採点するという趣向で上位からNHK(6.23)、日経新聞(6.08)と並ぶ中、朝日新聞は5.35点。読売(5.76)、産経(5.68)、毎日(5.63)なので、大手紙では最下位という結果が示されたのだ。

 これは同紙にとってはショッキングな結果かもしれない。

 信頼度が低下した理由を分析すれば、慰安婦問題や原発事故関連の誤報がダメージを与えた、という見方もできるだろうし、朝日に対して否定的なメディアの絶え間ない批判が奏功したという見方もできる。

 今でも朝日新聞に強いシンパシーを持つ人にとって、こうした批判は不本意だろう。しかし、一方で、長年のこうした批判に正面から向き合わなかったことが、信頼の低下につながった可能性はある。

平川教授のメッセージ

 東京大学名誉教授の平川祐弘氏は、著書『日本人に生まれて、まあよかった』の中で「『朝日新聞』を定期購読でお読みになる皆さんへ」と題した章を設けて、同紙に対する辛辣な批判を述べている。そこにあるのは、単発の誤報といった問題ではなく、より本質的な問題点の指摘だ。

 以下、いくつか印象的な文章を引用してみよう。

「朝日新聞社からは近年も、中国特派員を辞めた後、北京の日本向け宣伝誌『人民中国』の編集部に勤めた者がいました。こんな様(ざま)では公正な中国報道がなされるはずはない。
これでは日本の外務省のチャイナ・スクールの役人がたとえ北京の外交部へ天下りしても、新聞はそれを批判できなくなるではありませんか。
 それとも、あれもこれも職業選択の自由のうちでしょうか」

「世間には『朝日新聞』の主張と異なる意見を述べると『日本の右傾化』と騒ぐ人がおります。だがそうした人は『朝日新聞』の左傾化という現象に気がつかない、やや鈍感な方ではないでしょうか。
 右か左かは相対的な見方です。日本国がきちんと自国の安全を守ることができるよう法律を改めることを右傾化と呼ぶのは、日本人に軍隊を持たせればわが国がまた必ず軍部主導の国家となると決めてかかるようなもので、それは日本に対しいささか自虐的な見方に過ぎるのではないでしょうか。
 日本は自国の防衛に自分で責任を持つことが出来ぬ永遠に12歳の子供なのでしょうか。
 国家としても普通の一人前の国家となり、応分の責任を分かち持たぬ限り、日本人は人間としても一人前の大人にならないと思います。
 自国についてことあるごとに自慢する人はいささか幼稚で笑止(しょうし)ですが、自国についてことさらに否定的な見方をすることが良心的だと思う人も精神の倒錯でしょう。
 日本では自分のことを悪く言い、卑下することが美徳とされるようですが、それはえてして相手に媚(こ)び、相手に取り入ることの一形式でもあることをお忘れなきように願います」

 碩学の比較文化史家で、戦争を知る世代からの真摯なメッセージである。
「反朝日なんて偏った人たちだ」――そんな風に軽視すべきではないのではなかろうか。

デイリー新潮編集部

2018年7月12日掲載

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