プーチン理論のデタラメ ウクライナ侵攻失敗ならロシア連邦が解体の危機に?

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歴史的一体性の説得力は…

 ソ連時代の民族自治政策を失敗と呼ぶなら、現在のロシア連邦内の諸民族はどうなってしまうのか。プーチン氏は、ロシア帝国以前の歴史を持ち出して「ロシア人、ベラルーシ人、ウクライナ人の一体性」を強調している。しかし、これは諸刃の剣である。例えば、現在のロシア連邦の領土の相当部分が、かつてモンゴル帝国の支配下にあった。過去の歴史を持ち出すことになれば、トルコ系、モンゴル系のロシア国民の間でも「歴史的一体性」という概念が登場し、最終的にはトルコやモンゴルなどで暮らす同胞との結束を求める声も出てきてしまう可能性もある。これはロシアにとっても非常に危険な論理なのではないか。

 今回の戦争でプーチン氏が当初の目的を達成できるかは不透明だ。仮にできたとしても、ロシア側にもすでに多くの死傷者が出ており、経済制裁によるダメージはすべてのロシア国民に影響を与えている。それだけの犠牲を払う理由として、「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」は、非ロシア系の国民にとって果たしてどれだけの説得力を持つだろうか。もしこの戦争にロシアが敗れた場合には、国民の不満はかなり大きなものになるだろう。プーチン氏の論理は、下手をすれば連邦国家の解体に繋がりかねないほど危険な意味を持つかもしれない。

 最後にひとつ強調したいことがある。今回のウクライナ侵攻については、ロシア人、ベラルーシ人の友人達も胸を痛めている。彼らは皆、温かい人達ばかりである。世界ではロシア人だから悪いと決めつけられている人もいて、日本国内でロシアの商材を扱う店も被害に遭っているという。ロシア連邦が国際ルールに違反しているのは明確ではあるが、ぜひ個々のロシア人にその怒りをぶつけないであげてほしい。何よりも、一刻も早い戦争終結を願うばかりである。

ジャーナリスト・岡崎左京

デイリー新潮編集部

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