実は守りに強いが攻めには弱いロシア軍 ウクライナ侵攻でも大量の自国兵が死亡する根拠

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NATO軍の誤解

 2001年に公開された映画「スターリングラード」[ジャン=ジャック・アノー監督、日本ヘラルド映画配給]は、実在したソ連軍の狙撃手を描いた作品だ。

「冒頭、2人1組にさせられたソ連兵が小銃を1丁だけ与えられ、激戦が続くスターリングラードに放り出されるシーンが描かれます。どこまでリアルな描写かは議論の余地があると思いますが、ソ連軍やロシア軍の膨大な戦死者数を考えるに、あり得ない場面ではないでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

 それでもNATO(北大西洋条約機構)諸国はこれまでずっと、ソ連軍やロシア軍を「非常に強い軍隊」と考えてきたという。

「やはり独ソ戦でベルリンまで侵攻したという実績は大きいでしょうし、冷戦下でソ連軍が行うパレードでは、最新式の戦車が西側軍事関係者の注目を集めていました。『非常に性能が高く、西側の戦車は蹴散らされる』と言われていたものです。もし第三次世界大戦が勃発すれば、東側のワルシャワ条約機構の軍隊は、圧倒的に強い戦車で西欧を蹂躙してくる。それをNATO軍は対戦車兵器で、どうやって迎え撃つかというシナリオを練るしかないと思い込んでいたのです」(同・軍事ジャーナリスト)

ウクライナ侵攻の衝撃

 それが誤った認識だと気づく機会はあったという。1990年の湾岸戦争だ。

「湾岸戦争ではアメリカ軍が制空権を奪い、圧倒的な戦力でイラク軍を蹴散らしたことばかりが注目を集めました。その一方で、陸上戦に参戦したイギリス軍は、戦車隊がイラク軍の戦車隊と戦闘し、こちらも圧勝しています。イラク軍の戦車はソ連製で、イギリス軍の戦車は性能が劣ると言われていました。この時、一部の軍事関係者は『ひょっとするとソ連製の戦車は弱いのではないか?』と気づいたのですが、世界中の認識とはなりませんでした。まだまだソ連軍、ロシア軍は強いというイメージが強固だったのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 今回のウクライナ侵攻で、「ひょっとするとロシア軍は弱いのか?」という指摘も散見されるようになってきた。

「多くの記事で指摘されていますが、ロシア軍がウクライナ軍に手こずっていることを、世界中の軍事関係者が驚いています。戦死者が多いのではないかという分析も伝えられており、米下院には2000人から4000人のロシア兵が戦死した可能性があると国防情報局が報告しました。ロシア軍はソ連軍以来の伝統で、兵士の命を軽視してきました。ウクライナ侵攻でも非常に貧弱な装備で戦場に送られていることがよく分かります」(同・軍事ジャーナリスト)

デイリー新潮編集部

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