実は守りに強いが攻めには弱いロシア軍 ウクライナ侵攻でも大量の自国兵が死亡する根拠

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冬戦争の大敗北

 この後もロシア軍の被害は数を増し、ロシア革命が起きる原因の一つとなった。

「ロシアの戦史を振り返ると、死者数の多さに驚かされます。例えば第二次世界大戦で、ソ連は2回、フィンランドに侵攻しています。1939年の『冬戦争』では、フィンランド軍の死者は約2万5000人でしたが、ソ連軍は12万人超。41年からの『継続戦争』でも、フィンランド軍の死亡・行方不明者は約6万3000人だとされる一方、ソ連軍は20万人以上と推計されています」(同・軍事ジャーナリスト)

 フィンランドはソ連と戦うためにドイツと組んだこともあり、第二次世界大戦では敗戦国の扱いを受けた。

「フィンランド軍は善戦しましたが、勝利はできませんでした。終戦後、ソ連からは戦争責任を問われ、賠償金も要求されています。東西冷戦下ではソ連の顔色をうかがう必要もありました。敗戦の代償は大きかったわけですが、ソ連に大きな被害を与えることで国家の独立は守り抜きました。ウクライナ人はフィンランド史についての知識が豊富で、今回の徹底抗戦にも大きな影響を与えているとも言われます」(同・軍事ジャーナリスト)

多すぎる戦死者数

 フィンランドとの戦争でもソ連軍はこれだけの損害を出したのだ。独ソ戦での死者数は図抜けて多い。

「第二次世界大戦での各国の戦死者数は様々な推計があります。ただ、ソ連が突出しているのは間違いありません。1400万人以上と考えられています。それに対し、ドイツは280万人、日本は230万人、アメリカは29万人という数字が一般的です」(同・軍事ジャーナリスト)

 1950年6月に勃発した朝鮮戦争で、“人海戦術”という言葉が注目を集めたことをご存知だろうか。

 北朝鮮を支援するため、10月に“義勇軍”として参戦した中国人民解放軍が採用した戦術だ。

 たとえ装備が貧弱な軍隊でも、兵士の数が異常に多ければ、敵軍を圧倒することができるという含意もある。

「実は、この“人海戦術”を中国人民解放軍に教えたのは、ソ連軍だったという説があります。中国の参戦で、国連軍は当初、敗走を余儀なくされました。ところが、装備に勝ることから徐々に立て直しを図り、後半ではかなりの損害を与えることに成功しています。中国は朝鮮戦争で“義勇兵”の死傷者があまりに多いことに驚き、『今後はソ連の軍事指導を受けないほうがいい』と考えを改めたというエピソードもあるのです」(同・ジャーナリスト)

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