首都圏を守る戦車がゼロになって大丈夫か? 元陸上幕僚長に聞いてみると……

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今月、約70年の歴史に幕を下ろした

 ロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻開始から1カ月が経過。この間、ドイツをはじめとした西側諸国は相次いで国防費の増額を表明し、「新冷戦時代」への備えを進めている。

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 そのような折、飛び込んできたのが、首都圏から戦車がなくなるというニュースだった。東京を含む首都圏の防衛を担う陸上自衛隊第1師団が誇る精鋭部隊「第1戦車大隊」が、3月17日に約70年の歴史に幕を下ろしたのである。

「この日をもって事実上、首都圏を守る戦車がなくなりました。首都圏だけではなく、本州の戦車部隊は数年以内に全廃される予定です」(防衛省担当記者)

 冷戦後の陸自改革の中、政治・行政的要求により戦車の削減は避けられなかったようだ。とはいえ、折しもロシアの戦車がウクライナを蹂躙している最中。日本の守りは大丈夫なのか?

台湾・尖閣有事への対応力を強化

「戦車部隊は今後、二つの地域に集約されます。元々ソ連軍に備えて集中配備されていた北海道、そして九州です。これにより、南西諸島で有事が起きた場合、九州から増援部隊を迅速に派遣することができます」

 そう解説するのは、自らも戦車乗りだった岩田清文元陸上幕僚長である。陸上自衛隊は近年、中国の脅威に対応できる体制を整えてきた。有事には、全国に15ある師団・旅団の約半分を、南西方面に送り込むという。

「その際は残る半分の戦力で本州を守る必要があるため、本州の戦車部隊は順次、『16式機動戦闘車』を中心とした“偵察戦闘部隊”に改編されるのです」(同)

 16式機動戦闘車は、戦車と同じ主砲を装備しているが、キャタピラではなくタイヤで走る。そのため、戦車より高速で長距離を移動し、少ない戦力で広いエリアをカバーできる。つまり「戦車」はなくなるが、「機動戦闘車」は残るということで、まずは一安心ということだろうか。

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