兵士の士気が高いだけではない…ウクライナ軍“奇跡の善戦”の背後に3つの事情

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NATO諸国はミサイルを供与

 ビール編集委員も、英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のリサーチ・フェローに取材。以下のようなデータを入手したという。

《西側諸国は現在「数千」の対戦車兵器と「1000以上」のスティンガーをウクライナに届けている》

《イギリスとアメリカは2月24日の侵攻開始前からウクライナに武器を提供しており、イギリスからは軽対戦車ミサイル(Nlaws)2000基が届けられた》

《英米以外のほとんどの国は、ロシアの侵攻に対応するためにウクライナへの武器の輸送を開始した。武器をウクライナに提供しているのはあわせて14カ国で、長らく中立を維持し、NATOに加盟していないスウェーデンやフィンランドも加わってる。両国とも、数千もの対戦車兵器をウクライナに送っている》

《ドイツはウクライナに対戦車兵器1000基とスティンガー500基を提供している。バルト諸国はスティンガーや、射程2.5キロメートルで世界で最も効果的な対戦車兵器の1つである対戦車ミサイル「ジャベリン」など数千基を提供している。ウクライナはすでに、ロシア軍のT-72戦車数台の破壊に成功したとしている》

スティンガーの威力

 ロシアによるウクライナ侵攻では、ウクライナ兵の士気の高さや気骨などに焦点を当てた報道が世界的にも多い。だが、このような高性能の兵器が供与されているという現実は重要な点だろう。

 ある軍事ジャーナリストは「スティンガー、ジャベリン、NLAWの活躍により、ロシア軍が苦戦しているのは間違いないでしょう」と言う。

「スティンガーの歴史は古く、1970年代後半から生産が開始されています。BBCの記事にもありますが、1979年にソ連がアフガニスタンに侵攻した際、アメリカ政府は現地の反ソ連勢力にスティンガーを供与。取り扱いが簡単で、僅か30秒で発射できるといった高性能により、ソ連の攻撃機、戦闘機、ヘリコプターを撃墜しました」

 それから何度もスティンガーは改良が加えられてきた。その高い能力がウクライナ紛争でも証明されていることになる。

「兵士にとって最大の利点は、ロシアの軍用機めがけて発射すれば、後はミサイルが自動的に追尾してくれる機能です。旧式の対空ミサイルも自動追尾の機能はありましたが、スティンガーは赤外線センサーの感度が高いのです。命中率がアップしており、ロシア空軍にとっては脅威でしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

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