プーチンとのパイプで注目も… 「マクロン」にフランス国民からの3つの批判
成果が出ていない
ひとつめの批判は「会談の成果がまるで出ていない」というもの。
国境なき記者団会長のピエール・アスキはラジオフランスのインタビューで、「マクロンとプーチンの対話は『終わらないが、結果が生み出されていない』というパラドックスがある」と述べました。
「ウクライナ危機が始まって以来、プーチンは他のどの外国の元首よりも多くマクロンと電話や対面で会合している。マクロンは外交政策として対話を維持することの重要性を強調しているけれど、結果は出ていない。ロシアと数多く対話しているにもかかわらず、ロシアの軍事計画を止めたり、変更させることはできなかった」
マクロンは2月7日にロシアでプーチンと会談をした際にも、「平和的な解決策を検討する」と合意したにもかかわらず、プーチンはウクライナ侵攻を断行してしまいました。他のヨーロッパ諸国より密に対話を続けてきただけに、フランスでは外交失敗の声が聞かれました(会談の様子として公開された写真も、テーブルの端と端で会話している両者が離れすぎていて、二人の距離を表しているなど揶揄されていました)。
Le Figaro紙が「(ロシア)訪問の目的は達成した」という記事を掲載した際にも、「マクロンの目標が世論調査の支持率上昇だとしたら、成功しましたね」という辛らつな読者のコメントがありました。アピールの割に成果が出ていないという見方をする人は多いようです。
経済制裁の妥当性
ふたつ目の批判は、ロシアに対する制裁そのものです。
フランスの極右政党・国民連合党の暫定党首ジョルダン・バルデラは、ロシアを標的とした新たな制裁に関して、「制裁のツケを支払うのはフランスの輸出企業であるため、(経済制裁は)逆効果だと思う」と述べています。
これまでもたびたび行われてきたロシアに対する制裁が、ロシアへの農業輸出をこの数年で14%近く減少させていることを指摘し、「何よりも、ロシアに対する経済制裁は、ガス価格の高騰という報復をもたらすので、直接被害を被るのはフランスである」と付け加えています。
フランスのみならず、距離的にも近く、エネルギー供給をロシアに依存している国は、制裁に対する報復を無視できない事情があるのです。
実際、ウクライナ危機以来、日用品やエネルギー価格が高騰し、イタリアのインフレ率は2月に1995年以来の最高水準5・7%に、ドイツは5・1%に達しました。フランスのパリ郊外のガソリンスタンドは、ウクライナ侵攻前の2月下旬は1リットルあたり1・5ユーロだったのが、3月頭には2ユーロを超えました。コロナのパンデミックがやっと落ち着いてきた矢先のこうした値上げは、国民への負担となります。
ロシアの実業家は、経済制裁が「ウクライナの紛争解決にどのように貢献するというのか、理解に苦しむ」と指摘しています。制裁が新たな別の問題を生んでいる側面もあり、ゆえにマクロンへの批判が生まれているようです。
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