東京マラソン、白バイ“先導ミス”の余波 世界新が出ていたら世界中から大物ランナーが

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 世界記録保持者が東京を走る!――3月6日に行われた東京マラソンは例年に増して注目を集めていた。

 その人、エリウド・キプチョゲ(37)は、9時10分に新宿をスタートし、快調にラップを刻んだ。10キロ地点でそれは自身が持つ世界記録を23秒も上回っていた。

 悲劇はその直後に起きた。

 上野3丁目付近で、先導する白バイが道を間違えたのである。

 スポーツ紙記者が語る。

「折り返し地点でUターンができない中継車は、直前の交差点の手前でコースを外れて脇道を進みました。これは予定通りの動きでしたが、後続の白バイが中継車につられて一緒に脇道に入ってしまったのです。しかも、交差点に戻ったところで左折すればリカバーできたのに、そこを右折してしまいました」

 続いてキプチョゲらも右折。そこで正しいコースを指さす係員に気づき、回れ右をしてコースに戻った。

「正しいコースに戻った一団にちょうど10秒遅れだった選手が追いついていたので、約10秒のロスでした」

新記録が出ていたら…

 優勝はキプチョゲで、世界記録より1分1秒遅れ。数字上はどのみち更新できなかったことになるが、

「あのミスのせいで完全にリズムを狂わされましたし、メンタルにも少なからぬ影響が出たはず。世界記録は全ての条件が揃わないと出るものではない。それは誰よりもキプチョゲが一番よく知っているでしょう」

 かくて世界記録は霧散した。キプチョゲには気の毒だったが、最も痛手を被ったのは“東京マラソン”そのものだった。

「世界記録は2003年以降ベルリンマラソンで樹立されています。これによりベルリンは“世界最速コース”の称号を得て、以後、有力選手はベルリンを最優先して出場レースを選ぶようになったのです」

 今レース前、ベルリンマラソンのディレクターが東京マラソンのディレクターに“女子の記録はいいけど男子の記録は抜かないで”と懇願したという話もある。

「新記録が出ていたら、東京は世界長距離界の“一丁目一番地”になり、大物ランナーを集めやすくなっていたでしょう」

 来年もキプチョゲに走ってほしいが、彼もはや37歳。東京は、千載一遇のチャンスを逃したのだった。

週刊新潮 2022年3月17日号掲載

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