老化の原因にもなる「ゴースト血管」とは 第一人者がアンチエイジングのヒントを伝授

ドクター新潮 健康 長寿

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30代から顕著に

 実際にゴースト血管が顕著に見られるようになるのは、30代以降です。30代に入ると、加齢に伴って細胞の分裂機能が低下し、毛細血管が劣化を始め、20代と比べて毛細血管の数が10%ほど減ります。その後も年齢を重ねるごとに減少は続き、70代では約4割が失われてしまいます(個体差あり)。

 ただし、ゴースト血管の原因は加齢だけではありません。若い方でも、生活習慣や食生活の乱れは、毛細血管に大きなダメージを与えます。

 なかでも注意してほしいのは血糖値の急激な上昇です。過剰な糖質と体内のたんぱく質が結びつくと、AGEという“コゲ”のような物質が生じます。さらに、毛細血管の血管内皮細胞がAGEを取り込むと、活性酸素が大量に発生し、全身を酸化させる。AGEという“コゲ”と、活性酸素がもたらす“サビ”によって血管のゴースト化が加速するのです。お酒や清涼飲料水、缶コーヒーを一気に飲み干したり、ダイエットをしていた人がリバウンドで暴食することは、血糖値を急上昇させるので絶対に避けてください。

 加えて、睡眠不足もゴースト血管を促進します。人間は寝ている間に成長ホルモンとメラトニンを分泌して、血管のリカバリーとメンテナンスを行います。そのため、睡眠不足だと血管のダメージが修復されないまま、新たな負担に晒されることになる。こうした負のスパイラルによって、若い人でも毛細血管のゴースト化は進んでしまいます。

ゴースト血管を見極める方法

 毛細血管の直径は約10マイクロメートルと、髪の毛のおよそ10分の1というサイズなので、肉眼ではその様子を確認できません。自分でゴースト血管になっているかを見極めることは難しいのですが、医療現場でも用いられる「爪床(そうしょう)圧迫テスト」はひとつの目安となるでしょう。

 爪の色は、その下の毛細血管が透けて見えるので赤みがかっています。このテストでは、親指の爪を反対の親指と人さし指でギュッと10秒ほどつまみます。そして、パッと離してすぐに赤みが戻れば血流が正常な証拠。白くなったままだと毛細血管機能が落ちている危険性があります。

 とはいえ、加齢以外の原因があるのなら、予防することも可能といえます。基本的な予防法は、生活習慣病対策と同じと考えてください。重要なのは、バランスの良い食事と十分な睡眠、そして適度な運動です。

 食事についていえば、血管に負担を強いる高血圧を引き起こすため、塩分の摂り過ぎは禁物。ただ、味気ない食事を根気強く続けることは難しい。そこで、たとえ薄い味付けでも満足感を得られるよう“うまみ”成分を意識してください。かつお節に含まれるイノシン酸やこんぶのグルタミン酸、干しシイタケのグアニル酸といった日本食が誇る出汁の数々は極めて有効です。また、お酢の効果も見逃せません。米酢だけでなく、りんご酢や梅酢、バルサミコ酢などは料理に使うと味に深みが出ます。しかも、酢酸を摂取すると、体内でアデノシンという物質が分泌され、これには血管を拡張して血圧を下げる作用もあります。塩分に頼らない食事を摂ることを習慣づけましょう。

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