老化の原因にもなる「ゴースト血管」とは 第一人者がアンチエイジングのヒントを伝授

ドクター新潮 健康 長寿

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毛細血管がゴースト化するとメラニンを処理できず

 その点を分かりやすく取り上げた研究があります。

 愛媛大学医学部附属病院で抗加齢・予防医療センター長を務める伊賀瀬道也教授は、「動脈硬化の進行度(血管年齢)」と「見た目年齢」の相関性を調査しました。すると、見た目年齢が高い女性は、低い女性と比べて、血管年齢が平均で5歳高かった。見た目年齢が高い男性も同様で、それが低い男性より血管年齢が8歳も高いとの結果が得られたそうです。

 これは毛細血管を対象とした調査ではありませんが、私自身、ゴースト血管と見た目年齢が比例しているというケースを数多く目にしてきました。とりわけ、見た目年齢を大きく左右する“肌”の状態は、毛細血管と深く結びついています。

 人間の表皮にある角質層は、紫外線を反射し、体内への侵入を防いでいます。しかし、紫外線によって産出された活性酸素は皮膚の細胞を攻撃し、メラニンという色素成分を発生させる。通常、メラニンはマクロファージと呼ばれる免疫細胞によって捕食・消化されます。ところが、毛細血管がゴースト化して血管から老廃物が漏れやすくなると、マクロファージはそれを回収するのに忙しく、メラニンを処理しきれない。残されたメラニンは色素を沈着させ、“シミ”が肌に現れてしまうわけです。

薄毛への影響も

 また、表皮の層の下には真皮という部分があり、毛細血管はこの真皮まで届いています。健康な毛細血管から漏れ出た水分や組織で発生した老廃物はリンパ管が受け取って、静脈から動脈、そして、腎臓を通じて体外へと排出されます。これがゴースト血管の場合、漏れ出す量が過剰となってリンパ管だけでは対応が追いつかず、組織に水分や老廃物が溜まっていく。これが“たるみ”や“むくみ”の原因となります。

 加えて、“薄毛”への影響も見過ごせません。

 頭髪の根元にある毛根は、毛包という組織に文字通り包まれています。毛包はいわば髪を守る“鞘”のような存在で、その周囲にはとぐろを巻くように毛細血管が張り巡らされている。毛根は毛細血管から大量の酸素と栄養を吸い上げることで、太い髪の毛を作っているのですが、この血管がゴースト化すれば、当然ながら栄養が行き渡らなくなって髪は痩せ細り、脱毛にも繋がります。

 ここまで読んでいただければ、私が冒頭で述べた〈人は毛細血管とともに老いる〉という言葉の意味を理解してもらえるのではないでしょうか。

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