ウクライナ侵攻で問われる「戦時経済力」 日本は「新しい資本主義」なんて言っている場合じゃない

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日本経済も「戦時体制」

 ロシアによるウクライナ侵攻がエスカレートするばかりだ。米国や西欧諸国はロシアに対する経済制裁をさらに強化、直接の武力衝突は回避しているものの、もはや全面的な「経済戦争」状態に突入している。西側の一員である日本も否が応にもこの「経済戦争」の一端を担う事態になり、日本経済も「戦時体制」へと突き進んでいる。こんな状態で岸田文雄内閣は正しく主導していけるのか。

「一歩間違えば、日本経済は破滅しかねません」と語るのは政府の経済政策に詳しい経済ジャーナリストだ。

「ロシアへの経済制裁の“返り血”を日本はモロに浴びることになります。米国のジョー・バイデン大統領が、ロシア産原油・ガスの輸入を禁止する大統領令に署名しました。これを受けて原油価格はさらに上昇を続け、日本でも9日、1キロリットルあたり8万円の大台を超えました。米国はエネルギー自給率が高いのでモノが手に入らなくなることはありませんが、それができないヨーロッパや日本がどの程度同調していくのか。ロシア産天然ガスに50%以上を依存しているドイツや、エネルギーを基本的に輸入に頼っている日本は深刻なエネルギー危機に陥ることになります」

ロシアとドイツの窮乏戦

 だが、ロシアからのエネルギー輸入など貿易を続けていけば国際社会からの反発だけでなく、国内からの批判も免れない。

「英国石油大手のシェルがサハリンでの天然ガス事業からの撤退を表明しましたが、同じく出資している三井物産や三菱商事は撤退を決断できていません。サハリンでの共同事業は、中東に依存していたエネルギー輸入源を多角化する長期戦略、つまり国策で進めて来ました。ですから、これを撤退するかどうかは政府がどう判断するかにかかっています。ロシア排除を決めれば、日本は十分なエネルギーを調達できなくなる可能性があります」(同)

 陸続きの欧州各国はすでに戦時体制になっているという。欧州に詳しい元外交官が語る。

「ドイツは国防費の思い切った増額を決めたほか、ウクライナへの武器供与にまで踏み込みました。天然ガスに関しては、とりあえずは中期的な依存度を下げるというステートメントを出すに留めていますが、民間人にも大量の犠牲者が出るウクライナの首都キエフへの侵攻などが始まった場合、ガス輸入を止める可能性は十分にあります。そうなると輸入代金が入らないロシアとガス不足になるドイツはともに経済的に追い詰められ、我慢比べの様相を呈するでしょう。ドイツ人の性格からすると、窮乏に耐えることを求められても戦う方を選択するはずです。仮にウクライナが陥落しても、ロシアがそこで止まる保証はありません。旧ソ連軍と直接戦った記憶のあるドイツ人はロシアを根本から信用していませんしね」

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