プルシェンコ氏の「大統領を信じています」発言 専門家はロシア人特有の反語の可能性を指摘

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プルシェンコの反語

 プルシェンコ氏の新しい投稿も、親プーチンの文脈と受け止められたようだ。日本のメディアから、代表的な見出しをご紹介する。

◆「人種差別をやめろ」 プルシェンコ氏がロシア批判に反発(毎日新聞電子版・3月7日)

◆プルシェンコ氏の“激ギレ”投稿に心配の声「プーチンに洗脳された」(東スポWeb・3月7日)

◆プルシェンコ「ロシア人よ、下を向くな! 誇りに思え」 差別やめるよう訴える投稿「いま言うべきこと?」と猛反発(ねとらぼスポーツ・3月7日)

 だが前出の中村教授は、プルシェンコ氏の「私は私たちの大統領を信じています!」との一文に注目し、そこから「打倒プーチン」という“反語”が読み取れると指摘する。

「この表現は欧米人や日本人には理解できない、ロシア独特の表現である可能性があります。例えば『我々を助けてくれるのは神しかいない』という文章は、『結局のところ助からないのだから、神にすがるしかない』というニュアンスが含まれます。批判されたプルシェンコ氏の『大統領を信じています!』という一文も、『我々は大統領を信じるしかないが、それでいいのか!?』という反語を、ロシア人なら読み取ると思います。プルシェンコ氏の投稿は、実はプーチン政権に突きつけた匕首のようなものと読み解くこともできるのです」(同・中村教授)

動揺するロシア人選手

 そうすると、メドベージェワ、パブリュチェンコワ、そしてプルシェンコ氏が、反プーチンの言動を表明したことになる。

 かつて女子プロテニス界の頂点を極めたロシア人のマリア・シャラポワ(34)も2月、Instagramに《戦争は許せない、祖国への制裁を一言書いてくれ》、《そろそろプーチンを独裁者、戦犯として罵倒してくれ》(註)と投稿し、大きな注目を集めた。

「プーチン大統領は、スポーツを国威発揚の場として利用してきました。加えて彼自身も、筋肉で引き締まった肉体を誇ることで、『美しい肉体は敵の弾を跳ね返す』という強いロシアのイメージ作りに腐心してきたのです。ところが北京五輪でも、ロシアのスポーツ界はドーピングにまみれていることが明らかになりました。更にウクライナ紛争で、選手は国際大会に出場できず、危機感を募らせています」(同・中村教授)

 大会に出られないとなると、プーチン政権を批判する余裕もなくなるという。一見すると、メドベージェワといった少数の例外を除けば、ロシアのスポーツ界は沈黙を守り、政権に恭順しているように思える。だが、実情は異なるという。

「アメリカやヨーロッパは意図的に『ロシアの優秀な選手に罪はない。救済したい』と強く呼びかけています。人道主義的な措置のようにも思えますが、実情は経済制裁の一環と見るべきでしょう。言葉は悪いですが、ロシアのトップアスリートを自国に奪ってしまうわけです。ロシアのスポーツ界が弱体化すれば、それだけプーチンの権威も下落します。選手は明日にもロシアを出るか、残るか、今、必死で考えていると思います」(同・中村教授)

註:ロシア出身・シャラポワさんSNSへ「祖国への制裁を一言」「プーチンを罵倒して」…コメント欄閉鎖(スポーツ報知電子版・3月3日)

デイリー新潮編集部

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