人知れず500万人が苦悩する「便もれ」改善方法 深刻な病気の兆候という可能性も

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ビールやシャンパンに注意

 汚染された食べ物を口にして食中毒になり、下痢になることも。

「急な下痢は止めるな」

 研修医になると必ず言われるそうだ。

「腸が細菌に感染したら、悪い細菌を外に出そうとします。それで下痢になる。急性の腸炎のときに薬で無理やり下痢を止めると、重篤化して、ときには命の危険もあります。治療の場では、脱水症状にならないように、水分補給をしっかり行いつつ、悪いものは全部外に出してしまいます」

 次に、診察で下痢の原因となるような病気が見当たらず、アレルギーも細菌感染もない場合、どんな理由が考えられるのだろう。

「病気のほかには、食べ過ぎ飲み過ぎとか、疲労とか、いろいろあります。お酒を飲んだ後の下痢の原因でもっとも多いのは、単純に食べ過ぎ飲み過ぎだと思います。会食は、脂の多いメニューになりがち。脂はもともと消化しにくく、更にアルコールが吸収を低下させるため、お腹をこわしてしまうわけです。もちろん、多量のアルコールも下痢の原因になります」

 ノンアルコールの飲み物は主に腸で吸収される。一方アルコールは胃でも腸でも吸収できるため、身体はどんどん受け入れる。

「アルコールは水分や電解質を吸収する腸の力を弱めてしまいます。会食では楽しい雰囲気に後押しされ、いつもより飲み過ぎてしまいますよね。ビールやシャンパンのような発泡系の飲み物はとくに下痢を起こしやすいと思います」

 飲み過ぎ食べ過ぎの翌日は、市販の下痢止め薬に頼る人も多いはずだが、どんな薬を選べばいいのか――。

下痢止めは早めに

 全国に2302店舗(2021年11月末現在)の薬局を展開する大手ドラッグストア、ウエルシアホールディングス株式会社で話を聞いた。

「私自身も豚肉と牛肉のアレルギーがあって、焼肉を食べた翌日には下痢をすることがあります」

 そう打ち明けるのは、ウエルシア薬局商品本部商品統括部長で、薬剤師の資格も持つ中田裕之さんだ。

「私は腸内環境を整えるために、整腸薬を服用、そのうえで食品のヨーグルトなどを習慣的に摂取しています。そして緊急時、急にお腹がキュルキュルいいだしたときは、対症療法の意識で、下痢止めを飲みます」

 乳酸菌などを原料とした整腸薬や下痢止めにもさまざまな商品があるが、どれがいいのだろう。

「整腸薬服用と毎日のヨーグルト摂取で、腸は好調です。整腸薬にも身体との相性があるかもしれないので、効果に満足できない場合は、他の整腸薬もいろいろ試してみるしかないでしょう。ヨーグルトはスーパーやコンビニへ行くとたくさんの種類があるので、とくに銘柄を決めずに、おいしそうなものを選ぶといいと思います。一方、下痢止めですが、ドラッグストアで手に入る薬は、慢性の下痢ではなく腸の調子がよくないときに飲むものだと思ってください」

 選ぶときはパッケージの成分表をよく見ること。

「ロペラミド塩酸塩が配合されている薬をおすすめします。腸の過剰な運動をよく抑えてくれます。でも、飲んでも瞬時には効きません。薬は、体内で溶けて吸収されてから効果が表れます。だから、お腹に異変を察知したら、早めに飲む方がいいでしょう。急な下痢が心配な人は口の中ですぐ溶けるフィルム状の下痢止めをお守りと思って持っているといいかもしれませんね。ただし、常用はおすすめできません。腸の活動を抑え過ぎて、便秘になってしまいます」

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