「SNSで説教と自慢」「ゲームに高額課金」 中高年を蝕む「スマホ脳」の実態

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情報メタボ

 人間関係や生活上のトラブルのみならず、脳の働きにまで影響を及ぼしかねない高齢者のスマホ利用。一方でキャッシュレスやペーパーレスなどデジタル化が進む現状では、スマホは生活必需品、ネットは社会インフラともいわれている。「危ないから使うな」ではなく、いかに上手に、安全に使っていくかが問われるが、では具体的にどうすればいいのか。

 奥村院長は「スマホからの刺激を遮断し、自分を見つめ直すことが大切」とアドバイスする。

「もともとスマホを使っていなかったとき、何をしていたのか思い出してください。新聞を隅々まで読んでいたとか、丁寧に家事をしていたとか、自分のペースで行動し、時間を使っていたはずです。スマホから入ってくる目先の情報に振り回されず、まずは自分で考えたり、本当にしたいことを探したりする。『情報メタボ』になっている脳を休ませ、自分らしい幸せを感じてほしいです」

 奥村院長のお勧めは散歩だ。1日1時間でも近所を歩き、季節の移ろいや自然の風景を愛でながら五感を働かせる。こうすることで脳が活性化し、「スマホ認知症」の予防になるという。

「家族に頼りすぎない方がいい」

 さらに、スマホ利用に関わるトラブル防止には、操作や契約などの基本的知識も欠かせない。とはいえ、先の橋詰氏は「家族に頼りすぎないほうがいい」と言う。

「操作がわからず家族に尋ねると、“貸して”と言われて勝手にいろんな機能を設定される。なおさらわからなくなってまた尋ねると、“さっき教えただろ”と面倒がられたり、“こんな簡単なこともできないのか”と怒られたりする。スマホに慣れ親しんだ若い人は、そもそも高齢者が何に困っているのかがわかりません」

 高齢者ならではの困り事に寄り添い、適切なサポートを受けるには、同世代でスマホに詳しい人に相談したり、スマホ教室に通ったりするほうが効果的。

 たとえば、総務省が実施する「シニア向けスマートフォン講習会」だ。デジタル化推進事業の一環として、昨年6月から全国1800カ所の携帯ショップや公民館で順次開催されている。対象者は延べ40万人、参加費は無料というから、初心者はもちろん、自分の利用状況に不安がある人も積極的に受講したい。

 ニュースや天気予報、交通案内や健康管理など、スマホには日々の生活に役立つアプリが満載できる。文字の音声入力や変換予測、検索などの音声案内といったアシスト機能も備わっている。正しい知識を持ち、節度ある使い方を心掛ければ、長い高齢期をきっと豊かにしてくれるだろう。

石川結貴(いしかわゆうき)
ジャーナリスト。静岡県生まれ。家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに豊富な取材実績を持つ。『スマホ廃人』、『毒親介護』、『スマホ危機 親子の克服術』など著書多数。

週刊新潮 2022年3月3日号掲載

特別読物「コロナ禍に高齢ユーザー急増でトラブル多発! 中高年を蝕む『スマホ脳』」より

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