国連に非加盟で台湾の有事はより深刻… それでもウクライナとは絶対的に違う点がある

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ウクライナから学ぶもの

 それでも核を保有する権威主義体制のトップが、自由主義陣営からの警告に耳を貸さず、制止を振り切って戦争に打って出ようとしたらどうなるのか。今回、それを押しとどめる手段が極めて限られているということが、改めて浮き彫りとなった。

 これまでも作戦計画の準備などによって、有事におけるシミュレーションが行われてきた。だがこれからは、既に述べたように抑止力を維持すると同時に、仮にその抑止を乗り越えて独裁者が戦争を決心した場合の対処についても、さらに入念に頭の体操を実施しておく必要があるだろう。

 ウクライナ危機を契機に我々は、剥き出しの力と力がぶつかり合う世界へと足を踏み入れつつある。ウクライナでは指導者と国民が、自らの命を賭して国を守ろうとしている。日本政府も中国の脅威に備えるために、自らの防衛力の整備に取り組まなければならない。ショルツ政権の新方針を大いに参考にし、対GDP比2%にあたる約10兆円を防衛費として確保すべきである。

 同時に日米同盟を強化して、抑止力を高める必要がある。安倍元総理がニュークリア・シェアリングについて提起したのも、抑止力を高めようという発想からだ。

 防衛力整備と日米同盟強化は、一義的には日本の領土領海領空を守り抜くためだが、それだけにとどまらない。結果として、台湾海峡を含むインド太平洋地域の平和と安定にも繋がるのだ。

 我々は侵略にあえぐウクライナへの連帯を示しつつ、危機から汲み取れる教訓を早速活かしていかなければならない。

村上政俊(むらかみ・まさとし)
皇學館大学准教授。1983年生まれ。東京大学法学部卒。外務省に入り、国際情報統括官組織、在中国、在英国大使館外交官補等を歴任。台湾大学訪問学者等を経て現職。航空自衛隊幹部学校、中曽根平和研究所では客員研究員を務める。

デイリー新潮編集部

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