ロシアのテレビで24時間流れる”捏造ジェノサイド” 若者たちは「消えるSNS」で抵抗

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 ウクライナ侵攻が始まって1週間。ロシアでは言論統制が日に日に強まっている。だが、若者たちは黙ってフェイクニュースを受け入れているわけではない。ITツールを駆使して真実を知ろうと努力し、間違った方向に突き進む国家に抗い続けているのだ。彼らが重宝する「消えるSNS」とは……。

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ネオナチが起こしたジェノサイド

 日本や欧米諸国で、今回の戦争が「侵略」であることを疑う人は少ないだろう。だが、ロシア国内では、今なお違うストーリーが語られ続けている。モスクワ在住の駐在員が語る。

「メチャクチャですよ……。国民がよく見ているのが『ロシア24』というニュース専門チャンネルなんですが、嘘ばっかりで一日中見ていると頭がおかしくなってきます」(以下同)

 キャスターの解説、パネラーたちの討論、VTR……。すべてがプーチン大統領のフィルターを通したプロパガンダ一色だというのだ。具体的にはどういったことが伝えられているのか。

「ウクライナ東部での防衛戦争という話にすり替わっています。反ロシア派の民族主義者のネオナチたちが、いよいよ“ジェノサイド”を起こした。迫害に苦しむロシア人を救うために軍が投入されたのだと。8年間の紛争で手足を失った現地住民の悲惨な映像などが、繰り返し流されます。映像自体は真実なのでしょうが、すべてプーチンが国民に印象づけたい文脈で語られるのです」

キエフの戦闘が一切語られない

 東部ばかり強調され、それ以外の情勢は伏せられたままだという。

「首都キエフを包囲して攻略しようとしている話も、一切出てきません。ウクライナ人の親戚を持つロシア人は多く、キエフはロシア人にとっても心の故郷のような街。ロシア軍がそこにミサイル攻撃していることを知ったら、国民が不安になるからです」

 ネット上の情報統制も強化される一方だ。戦争を境に、ウクライナ側のサイトは閲覧出来ない状態に。FacebookやTwitterなどのSNSの通信も制限され、投稿された動画を開こうとしても1分くらい時間がかかったりして使い物にならないという。だが、ITに慣れ親しんだ若者たちは、そんな網の目をかいくぐることが可能な”アイテム”を用いて、情報交換をしているという。それが“消えるSNS”と呼ばれる「テレグラム(Telegram)」というアプリだ。

「テレグラムは2013年にロシア人起業家のパーヴェル・ドゥーロフ氏が開発した無料のSNSアプリです。『エンドツーエンド暗号化(E2EE)』と呼ばれる機能が実装されており、データがすべて暗号化されるため、通信の秘匿性が高いのです。ほとんどの若者たちが利用しています」

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