軽い気持ちで不倫したら、妻も“仕返し”で不倫のてん末… 41歳男性が語った「覚悟」

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突然の「離婚してください」

 わざとらしく反省する姿を見せても、凌子さんには見抜かれる。だから地道に誠実さを示していくしかないと思った。

 娘を中心に、家庭でのイベントを増やした。時間をやりくりしてケーキ作りを習い、娘と妻の誕生日には、せっせと作った。3歳くらいになると娘は、『パパのケーキ』を心待ちにするようになった。

「やっと妻に許されつつあるなと思ったのは、娘が5歳になったころですね。娘の誕生日を祝いながら、目と目が合ったとき、凌子の目が心から笑っていた」

 だが――今から3ヶ月ほど前、信博さんは妻から「妊娠した」と言われ、腰が抜けそうになったのだという。

「だって、夫婦の日常は戻ったけど、夜の生活は戻ってないんですから」

 妻は「ごめんね」と言った。

「魔が差して大学時代の元カレと浮気をした。お互いに家庭に戻ろうと決めたけど、別れてから妊娠に気づいた。どうしたらいいか悩んだけど堕胎はしたくないから、産もうと決めたの。離婚してください」

 妻は一気にそう言ったんですよ、と信博さんは肩を落とす。凌子さんに復讐の意図はなかったという。ただ、夫と性行為をする気になれず、やり場のない気持ちだったとき、たまたま元カレに会ってしまった。自然消滅で別れた相手だっただけに、あのころの感情がよみがえってきて、数回、関係をもったのだそう。

 今度は信博さんが悩んだ。妻の行動もさることながら、自分の子ではないとわかっていながら、これから育てることができるかどうかを突きつけられているのだ。

「あなたに育てる義理はない、だから離婚してという妻の言い分は正論ですよね。だけど妻の子であることには変わりない。相手も妊娠を知らないまま別れているわけだし」

 今回、凌子さんはほとんどつわりもなかったから、信博さんは気づかなかった。そもそも、性行為をしていないのに妊娠するはずはないのだから気づかなくて当然だ。

「この前、凌子が合図したので彼女のお腹に手を当ててみたら、胎動がものすごいんです。娘も触ってびっくりしていました。お腹の子は女の子。娘は『そこで暴れてないで、早く来てね』とうれしそう。妻と子どもふたりが団らんしているところを想像してみました。やっぱり僕はその輪に入りたい。たぶん、僕は自分の子として出生届を出すと思います」

 妊娠のニュースが大きすぎて、妻が不倫していたことになかなか心が向かなかったのだが、もう今となっては責める気にさえなれない。命がかかっているのだ。

「子どもに罪はない。それに尽きますね。しかも娘が妹を楽しみにしている。僕だけ逸脱するわけにはいかない」

 妻へのわだかまりがないとはいえない。それでも、産まれてくる子を憎まない自信だけはあると信博さんは言った。思いがけない展開に、なかなか気持ちを整理することはできないが、今は妻の身を案じつつ、産まれてくる次女をひたすら待つだけだと最後はきっぱりと言い切って、彼は照れたように笑った。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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