「タイトル戦仕様の身体になってきた」 藤井聡太の最年少「五冠」立会人が明かす対局の裏側

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 またもや、の記録更新である。王将戦でストレート勝利し、史上最年少で「五冠王」となった藤井聡太・竜王(19)。その奪取劇を間近で見た3名の立会人が、カメラが写さなかった対局室の裏側を語った。

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「これだけ勝利を重ねられると、他の棋士にしてみれば、お手上げ状態というところですね」

 と述べるのは、将棋棋士の中村修九段(59)である。

 棋士会の会長も務める中村九段は、この王将戦で第4局の立会人を務めた。九段は36年前に23歳で王将位を獲得。長らくそれが最年少記録として残っていたが、今回、目の前でその記録を破られた格好である。

「いや、古い話過ぎて、私自身が覚えていなかったくらいで」

 と中村九段は笑う。

「2年ほど前に藤井さんが予選リーグに入った時、『最年少が私』という報道が出て、ようやく思い出したくらいなんです。むしろこの2年間、『最年少王将』として優越感を味わえてありがたかったですよ」

「感情をあらわにすることが減ってきた」

 将棋界には合わせて八つのタイトルがある。今回の王将戦での渡辺明・名人への勝利によって、藤井竜王は五つ目のタイトルを獲得した。五冠自体が、これまで羽生善治九段含め3名の棋士しか達成していない大記録。ここにデビューから5年余り、10代のうちに名を連ねることになったのだから、メディアが大きく報じるのも当然なのだ。

 奪取に王手を掛けていた第4局。竜王の姿はどう映ったのか。

「以前の藤井さんは、悪手を指した直後に膝を叩くなど、対局中に感情をあらわにすることもあったのですが、最近はそれもなくなってきましたね。王将戦は2日間で持ち時間が8時間の長丁場の対局ですが、終始、前傾姿勢で盤面に集中していたように思います」

 奪取後の報道によれば、竜王は、集中する時には前髪をかき上げる癖があるというものがあったが、

「それは気付きませんでした。ただ、長時間にわたって盤面に集中すると考えが煮詰まりますが、藤井さんの場合、時折、上を見詰めたり、窓外の景色を眺めたりすることがある。こうした些細な動きをした時が、ひょっとすると気分を切り替えるきっかけになっているのかもしれませんね」

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